どんな病気で保険を使うかを知っておくと良い
実際に加入した後、保険請求が多い病気のトップは老齢性疾患である。関節炎や心臓病など老齢性疾患は慢性病になることも多い。また、高齢になると保険に加入できないような、加入年齢の制限があるサービスもある。
また、高齢になってから新規に加入しようとすると、保険料が高くなるものも多い。年齢の若いうちに、加入しておくかどうかを早めに決めておく必要がある。
さらに保険請求の多い病気としては、胃腸炎や皮膚炎、外耳炎などが目立つ。岡田先生も「お腹や皮膚が弱いという悩みを訴えるケースは年齢を問わず、若い時からも多いです」と言う。
「保険会社の資料では診察も手術も多い事例として腸閉塞が入っていますが、何かを食べちゃって取り出すことはどの年齢でも多いので、保険の加入とは関係なく、異物の誤飲には常日頃からの飼い主さんが観察と注意と対策が必要でしょう。また、保険とは関係ないかもしれませんが、予防注射や駆虫薬など、一般的な予防医療をやっておくのも、病気の予防には大事です。
あとは普段から飼い主さんがたくさん遊んであげてくださいね。そうすると変化にも気づきやすくなりますよ」とアドバイスしてくれた。
ペット保険に関する動物病院のホンネとは
最後に動物病院にとって、保険を使った診療をすることで、飼主さんに対する印象は変わるのかどうか、ズバリ、本音を聞いてみた。
「診療は診療で、保険は保険なので、保険の有無は診療に影響はしません。診療については選択肢を探し出して、相談して、最終的には飼い主さんに診療についての判断をお願いしています。
ただ、保険の種類も多くなってきて複雑になってきているので、取扱いせずに、保険が利用できない動物病院もあります」と、岡田先生。保険を利用する時は、動物病院に利用できるかを確認しておくことが大切だと言う。
保険料の精算には1)窓口精算方式、2)飼い主請求方式の二つがある。1)では動物病院で治療した当日、治療費から保険料を差し引いた分を動物病院に支払う保険である。2)では病院から請求された治療費全額を支払って、後で飼い主さんが保険会社に保険分を請求する保険である。
1)の窓口精算方式だと、動物病院が保険会社に提出する書類や会計処理のやりとりが複雑となる。不正請求を防ぐために、必要に応じて保険会社から担当獣医師へ治療内容について問い合わせにも対応する必要がある。
保険の判断基準は保険会社によってバラバラなので、診察終了後の会計時、または、見積もりや問い合わせがあった場合には、具合の悪い動物を前にしながらも、獣医師が診療を進める前に一度手を止めて、保険の適応に関して調べる必要がある。場合によっては保険会社に問い合わせが必要になるなど、診療以外の手間と時間がかかることもある。動物病院側に負担が生じるケースも、ある様だ。
こうしたペット保険の仕組みを知った上で、岡田先生の話も参考にして、わが家とうちの子に合った保険を選びたい。岡田先生は最後に「ずいぶん前の話ですが、ペット保険を始めた会社が飼い主さんからお金を集めた後、計画倒産させて経営者が逃げた事件なんていうのもありました。保険を選ぶときはその会社が信頼できるかどうかもちょっとだけ考えてみて」と呼び掛けている。
取材協力/岡田響さん(ひびき動物病院院長)
神奈川県横浜市磯子区洋光台6丁目2−17 南洋光ビル1F
http://www.hibiki-ah.com/
文/柿川鮎子