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社員がやる気をなくす3つの事例と職場風土を改善するヒント

2024.04.26

入社した時にはやる気でみなぎっていた人が、徐々にやる気をなくしていく……。それは、リーダーや周囲の些細な言動が原因かもしれません。

社員のモチベーションが低下する職場風土の改善には、実は「関係密度」がカギになるのだそう。この「関係密度」とは何なのか、そして高めるポイントとは?

700を超える企業の職場風土改善に関わってきた中村英泰さんの著書『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』から一部を抜粋・編集し、〝社員のやる気を奪う間違った職場づくり〟を打破するヒントを紹介します。

社員同士の関係性を改善すれば、職場風土は変わる

職場風土を改善するためには、具体的に、なにをすればよいのでしょう。

職場風土は、部署やチームの社員同士の長年の関係性によってつくられる、ある種の文化ですが、職場風土を改善するには、社員の関係性を改善する必要があります。

それは、制度や仕組みで変えられることではなく、1人ひとりの日々の行動や考え方によって変わっていくもので、まずは、社員同士の関係性に目を向けて、改善を試まなければなりません。

関係性の改善は、「どんな職場であっても、誰であっても、『やる気をなくす瞬間』がある」という事実を受け止めるとともに、それが常に発生しているということを認識することからはじまります。

ものづくりでいう三現主義(机上の空論ではなく「現場」「現物」「現実」の3つを重視する考え方)と同様です。

私が提唱する関係性の改善は、組織行動学におけるソーシャル・キャピタルの考えを基点に、私の実践知を加えたフレームです。

ウェイン・ベーカー氏が著書において、ソーシャル・キャピタルとは、「人と人がつながりあうことによって得られる資源であり、職場の創発を生み出す重要な要素である。

キャピタル(資本)という言葉が示しているように、ソーシャル・キャピタルは、組織の生産性や目標を達成させると同時に、個人が人生の使命を果たし、社会に貢献することをも可能にする」と述べています。

関係性の改善を基盤としている職場で働く社員には、次のような特徴があります。

・私が、ほかの社員に対してどんなメリットをもたらしているかを知っている
・私が、隣の社員のためになにができるのかを知っている
・未来の成功は、1人では成せないことを知っている

多くの企業が、経営理念に「ビジネスを通じて、幸せを創造する」ことを掲げています。

その対象に職場の仲間は、社員は含まれているでしょうか。

ここで、関係性の改善に取り組み、職場風土改善を成し遂げたいくつかの企業の事例を共有します。

同時に、関係性の改善に取り組む前の「社員がやる気をなくしている」状況も共有します。

読んでいただき、やる気をなくしている要因はどこにあるのか、あなたならなにに取り組むかを考えてみてください。

ただし、各企業、細かな事情を把握したうえで取り組んだ施策です。

事例を正解とせず、参考にとどめてください。

■事例1 1on1面談はなんの目的があるんですか?

A社は、若年層社員の退職者が増えている現状を改善するために、1on1面談を3週に一度実施することを決めました。

上司は部下の状況や問題の把握。部下は報・連・相を行うことが主な目的です。

制度導入から1年が経過し、効果測定と改善に向けた課題抽出のため、私が外部面談に入ることになりました。

外部面談とは直属の上司が部下と行う面談とは別に、他部署や外部の専門家が行う面談のことです。

被面談者からすると、直属の上司には話しづらい本音や個人的なことなどを話すことができます。

組織からすると、質的な課題の抽出やまだ顕在化していないことを確認するのを目的に行われます。

すると、次のようなコメントが集約されました。

上司
・忙しくて時間がとれない
・部下が面談に後ろ向きで会話にならない
・そもそも、話すことがない

部下
・繁忙期で残業もできないのに、突然面談を設定されて困る
・上司から「面談しないといけないから」と義務的なコメントを言われる
・何回か、改善したいことを相談したが一向に返答もない

やる気をなくす要因はどこにあるのか、あなたならなにから、どんなことに取り組むのかを考えてみてください。

いかがですか?

1.やる気がなくなっている要因

上司と部下が「形式的に席に座わっていますが、心理的に向きあえていない」1on1面談が重ねられているようです。

お互いに、面談時間に意義も持てず、「やらされている感」を覚えていて、それがやる気をなくす要因になっています。

2.なにに取り組み、どう職場風土の改善をしたのか

(1) 面談をやめることを告げ、代わりに、参加者を入れ替えて職場の課題を共有する場を複数回設けました。

(2) その結果、「報・連・相や意見が言いづらい」「客先からのクレームが増えている」「社員同士が互いに協力しあうことがない」の3つに、課題は集約されました。

(3) 3つの課題に対して、改善するための具体的方法を考えてもらうように各部へ依頼をしたところ、「1on1面談を各自で回数を決めて実施し、1年後にどんなタイミングでプラスするのがベストなのかを確認する」ことになりました。

3.観察ポイント

こんな簡単なことで解決できるのかと、不思議に感じたと思われる方もいると思いますが、実は「やらされている感」は、やる気を削ぐ一つの要因です。

いつしか「決められたとおりにやらされている1on1面談」が増えて、負担を感じるようになっていたのです。

振り返ってみると次の3つが観察ポイントです。

・もともと、職場に若年層社員の退職者が増えていることへの課題感があった
・課題に対して「なにかする必要がある」と潜在的には思っていた
・内発的な動機が整う前に、外発的な方法(面談)がセットされた

いかがでしょう。やる気をなくす要因となっていた1on1面談が、主体的な取り組みへと変わりました。

人が新しい行動を習慣化するのに必要な期間は66日という統計が出ています。

そして、その習慣化するまでの66日の継続に欠かせないのは、主体的な意思です。

今この企業では、1on1面談は定着して3つの課題は、ほぼ改善されました。

■事例2 誰のためにやっているか

B社は、代表が「部下を成長させたい」「部下と一緒にいいものをつくりたい」という強い思いを持った企業です。

ごあいさつにおうかがいした際も、冒頭にそのことを熱弁されていました。

社内の至るところに「社長直送ご意見箱」「今月の感謝賞」「お客様からの声」などが掲示されていて、社長の思いの片鱗をみることができました。

ところが、いい会社だと思って外部面談に入ると、印象は一転します。

上司
・なにを言っても社長には伝わらないよね、社長の本心がわからない
・社長の思いはわかるけど、なんでもやればいいとは思わない
・社内の掲示物の作成とか、持ち帰って、自宅でやっているんだよ

部下
・社長の考えに共感して入社しました。いい会社ですよ
・上司の社長批判が聞くに堪えない。本当に嫌なんです
・この会社には尊敬できる上司がいません。役職者にはなりたくないです

社長
・気づいていると思いますが、わが社の中堅社員さんは使えません
・会社は、若手に期待しています
・苦手なことも徹底して取り組めばできるようになります

やる気をなくす要因はどこにあるのか、あなたならなにから、どんなことに取り組むのかを考えてみてください。

いかがでしょうか?

1.やる気がなくなっている要因

これはわかりやすい事例です。

お互いが足をひっぱりあっている状態です。

人の考えや感情は言動や行動に表れます。

「社長は、上司を含む中堅社員に否定的」で、「上司は、社長の改善行動に否定的」、「部下は、社長以外の上司・役職者の存在に否定的」である。もはや互いが「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の世界です。

そのため、お互いの接点を最小限にとどめようとしている傾向があり、社内には至るところに「やる気をなくす瞬間」がありました。

2.なにに取り組み、どう職場風土の改善をしたのか

(1) 上司、部下、社長と、全社員の外部面談に入りました。

聞き取りのポイントは「なにが許せないのか」「それはなぜか」「それでもこの会社にいるのはなぜか」です。

(2) その結果は次のようなものでした。

・「なにが許せないのか」に対する多くの意見は、「お互いに『自分勝手』だと思っている」
・「それはなぜか」に対する多くの意見は、「相談もなしに決めて押し通すから」
・「それでもこの会社にいるのはなぜか」に対する意見は、分かれましたが、主には「給与などの条件がよい」「多くの社員ががんばっている」「多くの顧客から支持がある」

(3) これらを踏まえて、社員をランダムに小グループに分けました。

グループに「企業とはなにか」「この企業を通じて私たちが得たいものはなにか」「その実現のためになにをするのか」を話す機会を複数回設定しました。

結果、現在創業48年の企業を、「100年経っても顧客に愛される企業」にするというビジョンができあがりました。

そして、その達成には、ほかの社員の協力が必要であることがわかったようです。

もちろん、その後「100年経っても顧客と『社員』に愛される企業」とビジョンは変わりました。

3.観察ポイント

多くの社員が、お互いに対する期待が過剰で、足りないことへ目を向けていました。それぞれが日頃から取り組んでいることに目を向け、それはなににつながっているのか、さらには「そうしたほかの社員の存在が自らに必要である」ことを小グループで何度も確認しました。

振り返ってみると、次の3つが観察ポイントになっていました。

・もともと、増収増益と業績はよく、顧客からの評価も高い企業であった
・それぞれが、企業の成長のため目の前のことに取り組んでいたが、働き手の側に立ったビジョンの設定がなかった
・そして、ほかの社員の「できたこと」より、「できていないこと」へ注目する風土がつくられていた

人は、「できていないことに対して気になる」傾向があります。

心理学ではツァイガルニク効果と呼んでいます。

そのバイアスを外すためには、これまであまり考えたことがない目標やビジョンを設定したり、(この事例においては、自身が取り組んでいること、ほかの社員が取り組んでいることをテーマにしました)話しあいを重ねたりすることを意識して行うのが大切です。

結果として互いに大切にすべきことがわかるようになりました。

■事例3 自分でやるしかない……自己責任感満載

C社は、創業以来、安定して成長してきましたが、主力商材の海外販売の不振から、この数年、業績の低迷が続いています。

上下や横の再連携と情報の共有を目的に、あらゆる面談の機会を増やしました。

上司からは「順調に実施している」との報告が上がってくるものの、突発的な離職やハラスメント相談が続いたため外部面談に入りました。

上司
・そもそも、自分で数字がつくれないなら当社には合わないから辞めてもよい
・情報共有は業績の好不調に関係なく日頃から個人でやること
・今の不調は、一部担当の問題。私は数字も順調です。この時間はなんですか

部下
・上司から今日は、15分で終わるように言われています
・問題は、2課の営業不振ですよね。ハッキリしていると思います
・予算達成できないと完全に悪者扱いされて、つらいです

やる気をなくす要因はどこにあるのか、あなたなら、なにから、どんなことに取り組むのかを考えてみてください。

いかがでしょうか?

1.やる気がなくなっている要因

以前、私が勤務していた企業も同じでした。社内には見えざる階層があり、「営業が一番偉い」雰囲気でした。

さらに、売れない営業は人扱いされず、早いと数週間で退職する人もいました。

この企業でも、単一的な思考がとても強く、「平家にあらずんば人にあらず」の風潮が、社内に独特の緊張感を生み出していました。

「〇〇でないのはダメ」、「□は不要」、「△は意味がない」などの思考が大小入り乱れ、それに自身をマッチさせることができればよいのですが、そうでない人やなじめない人はやる気をなくしていきました。

2.なにに取り組み、どう職場風土の改善をしたのか

結論から申し上げると、本事例は改善に向けることができず、1年で打ち切りとなりました。

なぜ、打ち切りになったのか理由だけお伝えします。

・1年取り組んだが、経営の重点項目に目立った改善が見られなかった
・社員から「意味が感じられない」「時間のムダ」との声が上がっている
・いろいろな施策を見直しているなかで、職場風土づくりに取り組む明確な意義が見当たらない

「職場風土づくりは万能ではなく、どんな企業でも必ず成果が出せるわけではない」とわかってはいても、C社のように、職場風土づくりが機能せず、プロジェクトが終了した事例に対しては、ご一緒いただいた社員の方々に対しては、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。

確実に変化の兆しもあったので断腸の思いでした。

この事例を含むいくつかの取り組みを検証してわかったことがあります。

それは職場風土づくりをある種のプロジェクトに見立てたとき、その成功に欠かせない次の5つがポイントだということです。

・早い段階で、各部門のカギを握る人たちをプロジェクトに巻き込み、趣旨の説明と問題点の指摘、不満を口にしてもらうこと
・プロジェクトの参加メンバー同士がプロジェクト成功のイメージを共有し、そのために必要な重点項目を握りあうこと
・経営層に、企業の重要業績評価指標とプロジェクトの相関に言及してもらうこと
・社内で展開する前に、全社員がプロジェクトの趣旨を理解できる状態にすること
・職場風土が社員の力で持続的に改善するようにプロジェクトの終盤では、外部要因である私たちは過干渉にならないように存在を薄めること

社員が「やる気をなくす瞬間」についてイメージを持っていただけましたか?

「ビジネスを通じて、幸せを創造する」を、現実のものとするためにも、要因の1つひとつを洗い出し、職場風土の改善に取り組んでみてください。

☆ ☆ ☆

いかがだったでしょうか?

社員のやる気を左右する「関係密度」が高くなると、「社員の不本意な離職率が低下する」「コミュニケーションの齟齬が減る」「他責志向が、自己課題自己解決型に向かう」などのメリットがあるそうです。

部下や後輩との接し方に悩んでいる人は、心地良い職場づくりのヒントが詰まった一冊『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』をぜひ書店でチェックしてみてください。

社員がやる気をなくす瞬間
間違いだらけの職場づくり
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著者/中村英泰(アスコム)
株式会社職場風土づくり代表
ライフシフト大学 特任講師
My 3rd PLACE 代表
1976年生まれ。東海大学中退後、人材サービス会社に勤務したのち、働くことを通じて役に立っていることが実感できる職場風土を創るために起業し、法人設立。年間100の研修や講演に登壇する実務家キャリアコンサルタント。

監修/田中研之輔

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