■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回はオリックス・クレジットを子会社化したドコモについて会議します。
ドコモがオリックス・クレジットを子会社化した狙いは?
房野氏:ドコモは先日、オリックス・クレジットを傘下に収めると発表しました。
石川氏:すでにマネックス証券も傘下に入れていますが、ドコモは金融事業が、他社に比べて大きく出遅れているので、手に入るところを買い付けている感じです。マネックスの時は、新NISAに取り組まないといけないタイミングで、オリックス・クレジットは、住宅ローンなどをやるために手を組んでいる。ただし、オリックス・クレジットは、auじぶん銀行の住宅ローンを扱っているので、それをどうするのかが個人的には気になっています。
法林氏:auじぶん銀行の住宅ローンは、オリックス・クレジットが仲介して売っているだけだから、あんまり関係ないと思うよ。ドコモでは、dカードを三井住友と組むか否かという話があったころから、金融系事業の将来展望を考えていたと思います。今回は〝クレジット〟の子会社化であり、自分たちで与信業務をすることに、限界が見えていたのでしょう。
端末のローンを組み、それを債権化してお金を生み出す……昔ソフトバンクがやっていた手法もできるのかな。ただし、お金を借りるユーザーはほぼスマートフォン関係なので、拡充するためのパートナーとして、オリックス・クレジットが注目したのでしょう。三井住友は離れていってしまったし、マネックスは証券会社なので、与信業務は基本的に関係ない。そこでオリックス・クレジットに白羽の矢が立った。
石野氏:ドコモは金融業務で足りないピースを、今、ちょこちょこと集めている感じですね。これって結局、銀行がないからなんですよね。
石川氏:ジグソーパズルで例えると、端っこは埋まってきたけれど、中のピースは全然埋まっていない、そんな状態です。
房野氏:逆に、ドコモはなぜ銀行を作らないのでしょうか。
石野氏:銀行を作るのって、相当大変だと思いますよ。
石川氏:ゼロから銀行を作るのは、かなり時間がかかる。手っ取り早く始めるなら、買収するという選択肢になるけれど、見合うところがないというのが現状なのかな。
石野氏:地銀ならありそうだけど、地銀だとなぁ……
法林氏:一時期、SBIが地銀をいくつも統合するような動きを見せていた。まとめればすごい勢力になるけれど、それをドコモがやるかと考えると、多分しない。だったら、以前、孫さんが注目していたあおぞら銀行とか、ほかの通信キャリアと組んでいない、りそな銀行とかはいけそうだけど、NTTグループが今さら組む? とも思う。
ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役 会長兼社長執行役員 孫 正義氏
石川氏:もはや今どき、ドコモが銀行の実店舗を持ってもしょうがないので、本来はネット専業でそこそこの数のユーザーがいて、業務ノウハウがあるところを買収すればいいんですけどね。
法林氏:auじぶん銀行もそうだし、PayPay銀行の前身のジャパンネット銀行もそうだけど、個人の銀行、ネット専用の銀行を作ろうとすると、相当時間がかかる。auじぶん銀行は、準備会社、設立調査会社を作ってから2年で免許を取って、ようやく開業となっている。
あと、ドコモとしてはどこかの銀行とがっちり手を組むと、NTTグループとして、他行と手を組めなくなるのは嫌なはずだしね。そもそも、やっていることが10年遅いよね。
房野氏:仮にドコモが銀行を始めた場合、一番のメリットは何ですか?
石川氏:ユーザーをがっちりと押さえられるところじゃないですかね。金融に料金プランを組み合わせると、解約率が下がるという話もあるし、住宅ローンを組めれば、実質35年縛りにもなる。
石野氏:そもそも、銀行業自体もちゃんとやれば儲かりますしね。