「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。
ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!
認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。
病院に行きたがらない家族をうまく連れて行くコツ:男性編・女性編
■「あれ?」と思ったら、迷わず認知症の専門外来で検査を
ご家族が「あれ?」と思う場面が増えても、すぐに専門の医療機関へ連れて行こうと考える人は、意外と少ないものです。「うちのお父さんにかぎってまさか」「妻が認知症になるはずがない」と思い、どうしようかとためらっているうちに進行してしまう場合が多いのが実状です。
また、認知症グレーゾーンになると、本人も自分の異変を自覚しています。
ですが、絶対に認めたくないと思うのが通例で、私自身、自分がそうなったときを想像すると、受診をためらう気持ちはわかります。
それでも、認知症は早期発見、早期対応が最も大切です。
グレーゾーンの段階で発見できれば、この本で紹介したセルフケアでUターンできる可能性が十分にあることを知っておいてください。
■男性には〝おとり作戦〟、女性には〝寄り添う作戦〟
認知症グレーゾーンの段階では、本人も葛藤している状態なので、ご家族が医療機関に導くのが難しい場合も少なくありません。
「なぜオレが病院へ行かなければいけないんだ」「私がボケてるとでもいうの!」と抵抗されがちです。
このとき、相手が男性であれば、受診に誘導するコツがあります。奥さんが、いわば〝おとり患者〟となって、「私、最近もの忘れが多くて心配なの。お父さん、一緒についてきてくれる?」と伝えるのです。
すると、たいていの男性は「オレがついていれば大丈夫だ」とか言って、率先して一緒に医療機関へ同行してくれます。
事前に連絡しておけば、認知症の専門医は上手に対応します。
奥さんの偽の検査をするときに、「ご主人も一緒にどうですか?」と声をかけ、奥さんとともに検査をするということにすれば、男性はわりとすんなり受け入れます。
結果、認知症グレーゾーン、または認知症とわかっても、医師が理にかなった説明をすると納得するのが男性に多い特徴です。
一方、奥さんが認知症グレーゾーンの疑いがある場合、ご主人が同様の〝おとり作戦〟を実行しようとしても、意外と失敗しがち。
男性は要領が悪いせいか、いつもと違うご主人の様子を奥さんはすぐに察知して、「自分のことが心配なら、お父さん一人で行ったら」と言われるのがオチです。
ですから、奥さんや母親など、女性を受診につなげるときは、下手に作戦を立てるよりも、本人の「もしかしたら」「怖い、どうしよう」という思いに寄り添い、希望のある言葉を伝えるようにしましょう。
「君のことがとにかく心配なんだ。今は認知症の医療がかなり進んでいて、早く発見できればUターンできるから受診しよう」といった言葉を伝え、第1章で紹介した山本朋史さんのケースを教えてあげると、なお心強いと思います。
認知症の専門医を探すときには、インターネットで「〇〇市 認知症 専門医」の3つのキーワードで検索すると出てきます。
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いかがだったでしょうか?
「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。
認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。
認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
【Amazonで購入する】
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著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。