「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。
ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!
認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。
認知症カフェで同じ思いを語り合う
■思いを共有し、救われたZさん
認知症のお姑さんを一人で介護しているZさん(55歳・女性)は、あるとき疲れたように、次のようなことをおっしゃいました。
「認知症の介護は終わりが見えない。どんなにがんばっても本人に喜んでもらえないどころか、暴言を吐かれることもある。ちょっと目を離したすきに外に出てしまったときは、生きた心地がしなかった。こんな毎日がいつまで続くのかと思うと、自分がどうかなってしまいそうで怖い」
このお姑さんは認知症でしたが、認知症グレーゾーンの人のサポートでも、将来に不安を感じ、しんどくなることは当然あります。友人や知人に相談しても、「無理しないで」「元気だして」「がんばって」という言葉で、逆に苦しくなってしまうことも少なくありません。
そんなとき、同じ苦労を抱えている人と話をするだけで、気持ちがすっきりすることもあります。
そこで私はZさんに、認知症の人と介護者の集まりである『家族の会』に、お姑さんと一緒に参加することをすすめました。
最近は、『認知症カフェ』『オレンジカフェ』『ふれあいカフェ』といったさまざまな呼び方で、ご家族同士が集う場が地域ごとに設けられています。そうした場へ行くと、自分と同じ悩みを共有できる人たちと出会うことができます。
Zさんは地元の『認知症カフェ』で語り合うことにより、自分自身が救われたといいます。そして、認知症のお姑さんが楽しそうにしているのを見て、「お義母さんも、自分をわかってもらえない不満があったんだと気づきました」とおっしゃいました。
もちろん、このあともZさんの介護は続きます。
それでも、思いを共有し合える人と出会えたことが、自分とお義母さんにとっての希望につながったと言うのです。
苦労話だけではありません。
認知症の介護では、ふとした瞬間に分かり合えたり、衰えていく脳の中にある豊かな感情に気づいたりして、光が差すように感じる瞬間もあります。そうした体験を話し合うことで、勇気づけられ、温かい気持ちを取り戻せることもあります。
認知症カフェのような場は、認知症グレーゾーンのご家族も参加できます。
「誰かにわかってほしい」と思っている人は、自治体に問い合わせたり、インターネットで検索したりして、そうした家族の会へつながることを強くおすすめします。
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いかがだったでしょうか?
「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。
認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。
認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
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著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。