「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。
ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!
認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。
「これからどうなるの?」と不安がるより、今できることに集中する
■グレーゾーンで見つかったことをむしろ喜ぶ
認知症グレーゾーンと診断されると、本人よりも、ご家族がパニックになってしまうことがよくあります。「これからどうなるんだろう」という不安で、冷静さを失ってしまうのです。
「あちこち徘徊するようになるの? 暴言や暴力が始まるの? 排泄物を口にするようになったりするの?」
「無理、無理。私がすべて介護するなんて、とても耐えられない」
「でも、子どもたちに迷惑をかけたくない。いったいどうしたらいいの」
そんなことを口にして、取り乱してしまう方もいらっしゃいます。
そうしたご家族に対し、私はいつも次のようにお話しします。
「認知症グレーゾーンは、回復する可能性が十分にある段階です。将来のことを先走って心配するより、今日これからどうすれば回復への道がひらけるかを考え、ご本人をサポートしていくことのほうが大事ですよ」
診断されたからといって、すぐに記憶を失ったり、人が変わってしまったりするわけではありません。すでに認知症になっている人でも、1年経った頃、「そういえば前と違っているな」と思う程度です。1年前はこれができていたのに、最近はできなくなったとか、年単位で変化していくのがふつうです。
認知症は、生活習慣病の一つ。
急に発症して、急に変化していくわけではなく、高血圧や糖尿病と同じように、何年もかけてジワジワと進行していきます。
ですから、認知症グレーゾーンの段階で発見できたことは、がんに例えると、早期で見つかったようなものだと思うのです。
すべての人がUターンできるとはかぎりませんが、脳の活性化に役立つ生活習慣を心がけていれば、進行を最小限に抑え、現状をキープし、さらには回復も望めます。
「どうしよう、どうしよう」と不安に陥っている時間があったら、今取り組める生活習慣をぜひ始めましょう。
それがUターンへ導くための最善策です。
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いかがだったでしょうか?
「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。
認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。
認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
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著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。