「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。
ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!
認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。
「これ何かわかる?」と試してはいけない理由
■試されると、人は傷つく
「これ誰かわかる?」「今日の日付言える?」「昨日の夕食何だったっけ?」
ご家族が日常生活のなかでやりがちなのが、「わかる?」という確認作業です。
本人がどこまで理解しているのかを知りたくて、つい聞いてしまう気持ちはわかります。何気なく聞いている場合も多いでしょう。
しかし、これは絶対にNGです。
いちいち試すような質問をされると、本人はバカにされているような気になります。しかも、すぐに答えられないと、自信を失う原因にもなるので要注意です。
Wさん(72歳・男性)は、奥さんと二人暮らしで、認知機能の衰えを感じているものの、普段はおだやかに暮らしていました。
ところが、近くに住んでいる娘さんのご家族が週に一度くらいの頻度で遊びに来て、そのたびに「お父さん、私のことわかる?」「孫の名前は言える?」と質問攻めにします。娘さんは、そうすることでお父さんの脳を刺激しようとしたのですが、Wさんにとっては大変なストレスでした。
しかも最近は、4歳の女の子のお孫さんまでが母親を真似て、「私は誰かわかる?」とか「自分の名前言える?」といったことを聞いてくるようになりました。
Wさんにとっては目に入れても痛くない可愛い孫ですが、4歳の子に「自分の名前言える?」と聞かれていい気分はしません。そのうち、娘さんの家族が来ても自分の部屋に閉じこもって出てこなくなりました。
こうしたケースは意外に多く、ご家族はよかれと思って対応していても、本人にとってはストレスになりかねません。その結果、Wさんのように人と接することを避けるようになると、認知症グレーゾーンを進行させてしまう重大な要因となります。
認知症グレーゾーンの段階はもちろん、認知症になってからも、かなり進行するまでは人格は保たれます。ごく身近な親族であっても、本人に対するリスペクトを忘れずに、「大切なお父さん」「大好きなお母さん」「愛する夫(または妻)」という思いをもって接することが大切です。そのうえで、生活習慣の見直しや、7つの因子の改善をサポートしていくことで、Uターンへの道はひらけるのです。
☆ ☆ ☆
いかがだったでしょうか?
「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。
認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。
認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
【Amazonで購入する】
【楽天ブックスで購入する】
著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。