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退職後が特に危険!認知症の最大かつ直接の引き金とは?

2024.07.28

「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。

ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!

認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。

認知症グレーゾーンを悪化させる7大因子とその改善法

趣味をもつこと、人との交流、運動、食生活、睡眠……。

認知機能の衰えを食い止め、認知症グレーゾーンからUターンするには、前章まででお話ししてきたような方法を試すことがカギになります。認知症は生活習慣病の一つですから、日々の生活を見直すことが最重要であることは間違いありません。

一方で、より直接的に認知症や認知症グレーゾーンの引き金になってしまうものがあります。

それは、加齢による「老化現象」です。

前のページに書いたとおり、認知症の最大のリスクは「難聴」です。

その理由は後ほどお話ししますが、ほかにも、「視力低下」「歯周病」「高血圧」など、加齢とともに増えていく健康のトラブルと認知症は無関係ではありません。

これらの老化現象も含めた、私の考える、認知機能を低下させる「7大因子」は、次のとおりです。

(1) 難聴
(2) 老眼、白内障
(3) 歯周病
(4) 喫煙
(5) 生活習慣病
(6) うつ病
(7) 孤立(孤独)

この章では、認知症グレーゾーンの発症と進行を促すこれら「7大因子」を取り上げ、気づきポイントや改善策をお話ししていきます。

また、こうした加齢による症状は、本人が気づきにくいことが少なくありません。

ご家族の気づきポイントや、サポートするうえでの注意点などについても、実際にあったエピソードをあげながら具体的に紹介していきたいと思います。

認知症の7大因子【孤立(孤独)編】

■退職後の男性を孤立させないための「友だち作戦」

これまでお話ししてきたように、認知症の原因はさまざま。

そのなかでも、最大かつ直接の引き金となるのは「孤独」だと、私は考えています。とくにご家族の方にお伝えしているのが、退職後の男性を孤立させないことです。

仕事をバリバリしていたときは、多くの人とつながっていて「孤独とは無縁」と思えるような人でも、退職したあとに孤独になる人は結構いらっしゃいます。

Tさん(68歳・男性)もその一人でした。

Tさんは、大手企業のナンバー2として長年手腕を発揮していました。そして65歳のときに、「もう自分の役割は十分に果たしたから、若い人に席を譲ろう」と考え、自ら会社を退職。奥さんと一緒に、悠々自適な人生を送ろうと思っていたのです。

ところが、いざ退職してみると、Tさんは日がな一日、何をするでもなく、奥さんがお茶会や習い事に出かけている間、新聞を読み、テレビをボーッと観ながら一人で留守番している毎日。退職して初めて、自分が仕事に夢中になっていた間に、家族はそれぞれ別の世界で人生を楽しんでいたことに気づいたといいます。

Tさんはそれまで、お酒もゴルフも、すべて仕事絡みでした。仕事を引退したあとは、気軽に電話をしたり、会ったりする親しい友人は一人もおらず、自分から昔の仕事仲間に声をかけるのも躊躇し、結局、奥さんの帰りを待つ日々。

そこで奥さんは機転を利かせました。Tさんが毎年年賀状を送っている大学時代のテニスサークルの仲間に連絡を入れ、「主人は自分からは連絡できないと思うので、誘いの電話を入れてもらえないでしょうか」と頼んだのです。

相手もTさんの気持ちを察してくれて、日中一人で留守番しているTさんにさりげなく電話をしてくれました。「久しぶり。定年退職したと聞いたから、みんなで会えたらいいなと思って連絡したんだけど、どう?」と聞くと、Tさんは「まあ、君がそう言うなら……」という物言いをしながらも、うれしそうに承諾したそうです。

■情けは夫のためならず

女性は比較的、職場でも地域のなかでも、その場その場でうまく順応していく傾向があります。これに対して男性は、職場や得意先の人と上手にコミュニケーションをとっていても、退職後に孤立するケースが少なくありません。

その根底にあるのが、いわゆる「男のメンツ」です。

退職後、地域のサークルや町内の自治会などへ出かけても、現役時代に役職が高かった人やインテリと呼ばれる職業だった人は「オレはちょっと違う人間」という意識が強く、ちやほやされないと満足できないことがあります。そして、たいていはすでにボス的存在の男性がいて、うまく折り合いをつけられず、結果的に煙たがられて孤立してしまいます。決して孤独を望んでいるわけではないのですが、Tさん同様、昔の仕事仲間や友人に自分から連絡をとりたくはない。

男というのは、つくづくめんどうくさい生き物なのです。

そんな男ゴコロを理解して、ご家族が年賀状などを手掛かりに一人でも友だちができるようにサポートをしていただければ、きっとTさんのようにうまくいきます。

「なんで私がそんなことをしなければならないの」と思う奥さんも多いでしょう。

しかし、そこは「利他・互恵」。すなわち〝情けは人のためならず〟で、ご主人の孤立を防ぐことができれば、結果的に奥さんもラクになります。

このケースなら、さしずめ「情けは夫のためならず」というところでしょう。

もちろん、自分がご主人と一緒に旅行を楽しんだり、趣味に興じたりしたいなら、それで大いに結構です。しかし、Tさんの奥さんのように、自分が楽しむ世界を別にもっている場合は、ご主人にも別の世界をつくってあげたほうが、自分が自由に生きていくことができる、ということです。

■自分以外の人間は「すべて師」と思う

もちろん、本人が自分で「孤立しない努力」をすることが大切なのはいうまでもありません。年をとってから新しい人間関係を構築するのは、ある程度のエネルギーを要します。とくに地域のサークルや自治会など、すでにできあがっている組織のなかに入っていくときなどは、ストレスを感じるのも事実でしょう。

それでも、人と交流するストレスと、交流せずに孤立するデメリットとを比較すれば、断然、人と交流するほうが大きなメリットが得られます。

認知症や認知症グレーゾーンの予防に役立つのはもとより、人と付き合うなかで学ぶことはたくさんあります。さらにその相手をほめることができたら、必ず自分の〝益〟として返ってきます。

歴史小説家の吉川英治が好んだ言葉『我以外皆我師(自分以外のものはすべて私の師である)』のように、どのような人であっても、他者には学ぶところがあります。

「この人は自分にないものをもっている」。

そう考えて人の話に耳を傾け、すごいと思ったときは素直にほめる。

そうした繰り返しが、人間関係の構築につながり、同時に認知機能のトレーニングにもなります。

☆ ☆ ☆

いかがだったでしょうか?

「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。

認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。

認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
Amazonで購入する
楽天ブックスで購入する

著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。

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