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知ってた?認知症グレーゾーンを悪化させる7大原因

2024.07.03

「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。

ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!

認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。

認知症グレーゾーンを悪化させる7大因子

趣味をもつこと、人との交流、運動、食生活、睡眠……。

認知機能の衰えを食い止め、認知症グレーゾーンからUターンするには、前章まででお話ししてきたような方法を試すことがカギになります。認知症は生活習慣病の一つですから、日々の生活を見直すことが最重要であることは間違いありません。

一方で、より直接的に認知症や認知症グレーゾーンの引き金になってしまうものがあります。

それは、加齢による「老化現象」です。

前のページに書いたとおり、認知症の最大のリスクは「難聴」です。

その理由は後ほどお話ししますが、ほかにも、「視力低下」「歯周病」「高血圧」など、加齢とともに増えていく健康のトラブルと認知症は無関係ではありません。

これらの老化現象も含めた、私の考える、認知機能を低下させる「7大因子」は、次のとおりです。

(1) 難聴
(2) 老眼、白内障
(3) 歯周病
(4) 喫煙
(5) 生活習慣病
(6) うつ病
(7) 孤立(孤独)

認知症グレーゾーンの発症と進行を促すこれら「7大因子」をの中でも、今回は難聴に関する基礎知識と改善方法を解説します。

また、こうした加齢による症状は、本人が気づきにくいことが少なくありません。

ご家族の気づきポイントや、サポートするうえでの注意点などについても、実際にあったエピソードをあげながら具体的に紹介していきたいと思います。

認知症の7大因子(1)難聴

■中年以降の難聴は、認知症リスクを2倍も高める

認知症の原因として、世界的権威のある医学雑誌『ランセット』に掲載された報告書では、難聴こそが最大のリスクの一つであるとされています。

中年期を過ぎてから難聴になり、適切な対応をしなかった人は、そうでない人にくらべて、2倍近くも認知症になりやすいことがわかっているのです。

難聴になると、耳から脳へ伝わる刺激が減り、脳の萎縮につながる可能性があると考えられています。また、人とのコミュニケーションがとりにくくなり、孤独やうつといった別の認知症リスクの引き金にもなります。

それほどのリスクであるにもかかわらず、老化による難聴は少しずつ進みますから、本人は気づいていない場合が少なくありません。

同居している場合は、家族でも気づきにくいことがあります。

テレビの音量が異常に大きくなった、何度も「え?」と聞き返されることが増えた、といった異変を感じたら、早めに耳鼻咽喉科で調べてもらいましょう。

■補聴器は認知症リスクを下げるけれど……

難聴と診断されると、補聴器をすすめられます。

聞こえをよくして認知症リスクを下げるにはそれがベストですが、補聴器は慣れるまでにどうしても耳に異物感があり、異音が気になる人もいます。

とくに認知症グレーゾーンや認知症の患者さんは、ストレスを感じて勝手に外してしまうケースが少なくありません。また、汗をかいたり、体を動かしたりしたときに補聴器が外れ、紛失してしまうこともよくあります。

補聴器がうまくフィットしていれば、そのまま使用するのが最善ですが、違和感を感じて使わないようであれば、本末転倒です。

そんな方には、私は小型の拡声器をおすすめしています。

■補聴器より、小型拡声器がベター

私は数年前から、難聴の患者さんを診療する際は、マイクとスピーカーが搭載された小型の拡声器を使うようにしました。この小型拡声器は、懐中電灯のような大きさと形をしていて、片側のマイクで話をすると、反対側のスピーカーから拡張した声が出力されるしくみになっています。

これを使うと、私の印象では1.5~2倍聞こえがよくなります。

外出時は難しいかもしれませんが、家の中で過ごすときは、ご家族に小型拡声器を使ってもらうのも、ストレスなく過ごすための手です。

■難聴の方を怒らせた私の失敗談

じつは、私が小型拡声器をすすめる背景には、毎日の診療での失敗体験があります。

以前は、難聴の高齢の患者さんを診療するとき、耳元に顔を寄せて大声で話しかけていました。ところが、患者さんの多くは不機嫌になり、なかには怒り出す方もいらっしゃったのです。

人は大声を耳にすると、感情をコントロールしている脳の扁桃体が反応し、怒鳴られているような気になります。難聴でない人でも、急に大声で話しかけられると、驚いたり、「うるさいなあ」と不快に感じたりしますよね? それと同じ理由です。

その反省から拡声器を使い始めたところ、これが大正解!

「ああ、よく聞こえますよ、先生」と言って、みなさん笑顔で答えてくださいます。

補聴器が使えなくてコミュニケーションがとれないと困っているご家族には、いつも小型拡声器をおすすめしています。

補聴器よりも手頃な値段で購入できるところも、小型拡声器の利点です。

☆ ☆ ☆

いかがだったでしょうか?

「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。

認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。

認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
Amazonで購入する
楽天ブックスで購入する

著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。

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