「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。
ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!
認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。
一人暮らしの高齢者が陥りがちな食事の偏りとは?
認知症を予防・改善するためには、毎日の食事も重要なカギを握ります。
年をとるにつれ、胃腸の働きが低下して食が細くなり、味覚も衰えていきます。
そのため、栄養バランスが偏りがち。
Rさん(71歳・男性)もそうでした。
1年ほど前に奥さんが亡くなり、一人暮らしになったRさんは、自分で料理ができないため、朝食と昼食はとりあえず満腹感の得られる「おにぎり」や「あんぱん」、ポテトフライや唐揚げを1~2品買ってきて、夕食代わりにする毎日。
その結果、運動不足も重なって、食事の量はそれほど多くないにもかかわらず、一人暮らしを始めて1年の間に体重が10キログラムも増量。
手足は細いのに、おなかだけがポッコリ出ているという、まさに生活習慣病の引き金となる「内臓脂肪型肥満」、いわゆるメタボ体形になりました。
やがてゴミを捨てるのもめんどうくさいと言って、家の中がゴミ屋敷寸前の状態に。
さすがに心配になった長男のお嫁さんが、私のところへ相談に来られたのです。
一人暮らしの高齢者の方は、Rさんのような食生活を送っていることが珍しくありません。炭水化物を食べる量が増える一方で、野菜やたんぱく質が大幅に不足し、肥満になったり、逆にやせたりしてしまう場合も多く見られます。
もともと料理好きの女性でも、認知症グレーゾーン(MCI:軽度認知障害)が始まると、料理を作らなくなるとともに、味覚や嗅覚が鈍くなることから、食事に対するこだわり自体が失われます。そのため、ごはんと漬物だけ、あるいは具のないうどんばかり食べていたりする場合が珍しくありません。また、コンビニやスーパーで適当に買った出来合いの総菜と、カップ麺を主食としている人も結構いらっしゃいます。
その結果、塩分や油脂の摂取量がどうしても増え、高血圧や糖尿病につながりやすくなります。これらの生活習慣病は血管にダメージを与え、動脈硬化から脳血管性認知症を引き起こす可能性があります。さらには、糖尿病になるとアルツハイマー型認知症のリスクをも引き上げてしまうのです。
体も脳も、健康の基本は食事にあり。
この章では、まずは脳を元気にする食事術からお話ししていきます。
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いかがだったでしょうか?
「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。
認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。
認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
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著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。