「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。
ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!
認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。
2つ以上の作業を同時に行い脳を刺激。認知機能をアップさせる
私たちは日常生活のなかで、自然と2つ以上のことを同時に行っています。
たとえば、料理を作るときに食材を刻みながら炒め物をしたり、電話しながらメモをとったりするなど。
この「2つ以上のことを同時に行う」ことを「デュアルタスク」と呼ぶのですが、このような普段当たり前にできていることが、認知症グレーゾーンや認知症の人には難しくなってしまいます。認知機能の衰えにともない、複数の情報を正確に情報処理できなくなっていくからです。
つまり、逆に考えれば、デュアルタスクを取り入れることで、衰えた認知機能を鍛えることができるということになります。
無理なく簡単にできるデュアルタスクとしては、「会話しながらの散歩」をおすすめします。一人で黙々と歩くのではなく、誰かと会話しながらウォーキングすることで自然にデュアルタスクを実践できます。
また、ふと気が向いたときに、上の図のように指先を動かすだけでもデュアルタスクを行うことが可能です。以下の方法を試してみましょう。
■手の指「ぐるぐる回し」
【「ぐるぐる回し」のやり方】
(1) 両手の指を合わせて、ドーム状の形をつくります。
(2) 親指をぐるぐる「10回」回し、次に反対回しで「10回」回します。
(3) 次に、人差し指を同様に「10回」回し、反対回しで「10回」回し、中指、薬指、小指と順に回していきます。
(4) それでは次に、2本の指(親指と人差し指、または人差し指と中指、人差し指と薬指など)を同時に回してみましょう。
(3)まではよくある指回しですが、(4)を加えることで「デュアルタスク」になります。
指同士がふれ合わないように回すのがポイントです。油断するとすぐにふれてしまうので、集中力が必要です。慣れてきたら、回す方向を変えてみるなど、自分なりにアレンジすればより効果的です。
■「片手でグーパー、片手で指折り」体操
ほかにも、一人で手を動かして楽しむ頭の体操があります。
名づけて、「片手でグーパー、片手で指折り」体操。
【やり方】
(1) 両手を開いて「パー」にします。
(2) 左手を「グー」にし、右手は親指を折って「1」と数え始めます。
(3) 次に、左手を「パー」にし、右手は人差し指を折って「2」と数えます。
(4) そのあと、左手を「グー」にし、右手は中指を折って……といった具合に5まで数えたら、右手の小指から立てていき、10まで数えます。
【ポイント】
最終的に両手が「パー」になっていれば合格です。
☆ ☆ ☆
いかがだったでしょうか?
「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。
認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。
認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
【Amazonで購入する】
【楽天ブックスで購入する】
著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。