「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。
ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!
認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。
今回は、大声で歌うことが認知症予防になぜ役立つのか、ひも解いていきます。
大声で歌えば、脳と体にいいことばかり
■脳内ホルモンが分泌し、高血圧予防にも
歌は発散。
思いっきり歌うことで、エンドルフィンなどの脳内ホルモンが分泌され、脳のストレスを緩和してくれます。ストレスは認知症のリスクを高めるため、大いに歌って発散しましょう。
また、1曲まるごと歌詞を覚えたり、音程やリズムをつかみながら歌ったりすることは、脳をフル活用することになります。
さらに、大声で歌うと自然と腹式呼吸になります。空気をいっぱいに吸い込み、深く吐き出すことで体に大量の酸素が取り込まれ、全身の血流がよくなり、認知症の誘因となる高血圧予防にも一役買ってくれます。
■カラオケで懐メロを歌おう
認知症グレーゾーンの段階なら、毎日の生活のなかで歌う機会を増やすだけでも効果は期待できます。まずは、そこから始めてみましょう。
ただし、ご近所の目(耳)が気になる方もいますよね。
そんなときは、ぜひ、ご夫婦や家族、仲間でカラオケに行ってみてください。
同世代みんなで懐かしい歌を歌えば、回想法を実践することにもなります。歌詞を区切って順番に歌うなど、ゲーム性を取り入れるのもいいですね。グループホームなどでは、「替え歌」にして楽しんでいるところもあるようです。
また、歌いながら手拍子を打ったり、ステップを踏んだりすれば、2つ以上の動作を同時に行う「デュアルタスク」として、より脳を活性化することが期待できるのでおすすめです。
2021年に報告された、大阪大学のAhmed Arafa 氏らの調査によれば、65歳以上の高齢者5万2601人のデータを分析した結果、楽器の演奏、およびカラオケを行っていた高齢者は、男性では認知症リスクがわずかに減少し、女性では認知症リスクの有意な減少が認められたとしています。
☆ ☆ ☆
いかがだったでしょうか?
「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。
認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。
認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
【Amazonで購入する】
【楽天ブックスで購入する】
著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。