醤油発祥の地、和歌山県湯浅町から世界初の調味料が誕生した。
チョコレート醤油とも称されるカカオ豆を使った新感覚醤油、その名も「カカオ醤」。
寿司や餃子はもちろん、アイスクリームにもマッチするまさに革命的調味料。開発したのは創業140年以上の歴史を誇る湯浅醤油有限会社。伝統の製法を学ぼうと大手醤油会社が見学に訪れるほどの老舗だ。
“ニッポンの醤油”の第一人者とも言える存在が、なぜチョコレートと醤油の融合という常識破りの挑戦に身を投じたのか?
今回、湯浅醤油有限会社代表取締役の新古さんに話を聞いた。
――「カカオ醤」開発の経緯を教えてください。
「2014年にイタリアのスローフードの展示会に出展した際、チョコレートが発酵食品だと知り、興味を抱いたんです。醤油も発酵調味料ですから、融合させたら面白いんじゃないかと思って笑」
なるほど…‥と言いつつ、筆者は初めて知った、チョコレートも発酵食品だったことを。
調べてみると、確かにそう言われていた。チョコレートの原料となるカカオ豆は収穫された後、木箱などに入れるなどの方法で発酵させるという。この発酵で生じた糖やアミノ酸が美味しいチョコレートの風味を生み出すのだとか。
「それからカカオ豆のことが気になってしまって、チョコレートソムリエの札谷加奈子さんが主催したベトナムのカカオ産地発酵ツアーに参加したんです。以来、毎年のようにベトナムに通ってはチョコの香りのする醤油を生み出そうと試行錯誤を続けました」
発酵していたチョコに惹かれ、カカオに恋をし、ひたすらマリアージュを目指して4年。カカオと醤油の両方の風味を感じることができる奇跡の調味料「カカオ醬」が完成した。
カカオと醤油を合わせて作った調味料は、まさに世界初。そんなカカオ醤の開発でのこだわりとは?
「やはり、カカオと醤油の両方の風味を感じることができる点ですね。醤油にローストしたカカオを漬けて熟成させることで、双方の魅力を存分に引き出せたと思っております。
ぜひ一度食べていただきたいのはカカオ醤をつけたお刺身!特に鯛などの白身魚では今までにない味わいが楽しめます。また、白身魚の漬け醤油の隠し味にも最適ですし、ジビエや鶏肉など肉料理との相性も抜群です」
既に中華、和食、フレンチなどのレストランを始め、新宿「ICON」のハンバーガーにも使用されているカカオ醤。今までの醤油を超えた調味料革命は今後、私たちの食文化を変えるかもしれない。
「最近、ダチョウやカンガルーなどの肉を使ったジャングル料理というジャンルも生まれていて、新たな料理でも魅力を発揮できる調味料だと自負しております。もちろん、既存の料理にもお使いいただける逸品として浸透していければ幸いです。さらには、バレンタインデーに『甘いチョコはちょっと』と思う人へのプレゼントにもおすすめしたいですね」