その水を飲めば若さを取戻し、病を寄せつけなくなるという伝説の〝若返りの泉〟はどこにあるのか――。人々はその答えをYouTubeに求めているかもしれない。
88%がYouTubeの健康関連動画を視聴している
古代ギリシャの時代から伝わる〝若返りの泉(Fountain of Youth)〟はどこにあるのか。その水を飲めば若返るという泉を求めて、大航海時代には海を越えての探索が繰り広げられた。
一説では米フロリダ州や西インド諸島にあると考えられていた〝若返りの泉〟だが、現代の人々は概念としての〝若返りの泉〟をYouTubeに求めているのかもしれない。YouTube上の健康関連コンテンツは依然として多くの注目を集め、めざましい充実ぶりを見せているのだ。
アラブ首長国連邦(UAE)・ハリーファ大学の研究チームが2024年1月に「BMC Public Health」で発表した研究では、ユーザーは健康情報だけでなく、意思決定ツールとしてもYouTubeを利用しており、ユーザーらの健康に多大な影響を与える可能性があることを報告している。
研究チームが行なった調査の参加者3000人中、2630人(88%)がYouTubeの健康関連動画を視聴しており、2542人(85%)がYouTubeの健康関連動画の影響を受けて意思決定を行なっていたことが浮き彫りになった。さらに44%が医師に相談する選択がYouTubeのコンテンツに影響されたと回答した。つまりに医師に相談する前にYouTubeで当該情報を入手して検討しているケースが増えているのだ。
参加者のうち、16.5%は健康関連動画を頻繁に視聴しており、15.7%はYouTubeのコンテンツに基づいて健康関連の意思決定を行なうことが多いと回答している。
健康関連コンテンツの分野では、エクササイズとボディービル(筋トレ)の動画が最も人気があり、参加者の53%がいずれかを視聴していた。これにメンタルヘルス系(47%)、生活の満足度系(42%)、ダイエットプログラム(37%)、肌ケア系(28%)、化粧品(23%)が続き、その他のコンテンツカテゴリの視聴者は相対的に少数であった。
「ユーザーは健康情報だけでなく、意思決定ツールとしてもYouTubeを利用しています。 このプラットフォームでのコンテンツの品質に対する彼らのおおむね前向きな姿勢と組み合わせると、これは彼らの健康に重大な影響を与える可能性があります」(研究論文より)
YouTubeは健康関連コンテンツの人気のソースであり、研究によると、この種のコンテンツをYouTubeで視聴するアメリカ人成人の割合は、2020年の40%から2022年の59%へと急増している。これにはコロナ禍による〝ステイホーム〟の影響もありそうだ。
人々はこのプラットフォームで健康関連のコンテンツを視聴するだけでなく、他者からのサポートを求めるためにも利用している。同様の健康関連の症状を共有する人々が、健康関連の質問に対する答えを見つけたり、計画された医療介入の前に情報を収集したりすることさえ普通のことになっているという。 この傾向を認識し、YouTubeは2022年に、個人が信頼できる公衆衛生情報源を見つけられるようにすることを目的とした「YouTube Health」イニシアチブを導入した。
ご存知のようにYouTubeは人気のあるオンラインビデオ共有プラットフォームで、ユーザーはエンターテインメント、教育、ニュースなどの幅広いトピックスに関する動画ををアップロード、共有、視聴して楽しんでいるのだが、昨今はこのような健康関連コンテンツの充実もめざましく、ますます存在感を高めていることになる。健康分野において人々は〝若返りの泉〟をYouTubeで探し求めはじめたのかもしれない。