「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。
ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!
認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。
脳トレするならクロスワードパズルより麻雀がおすすめ
■「仲間と一緒」が脳に与えるいい影響
脳の若さを保つために「脳トレ」を日課にしている人も多いでしょう。
私のクリニックの患者さんたちからも、「クロスワードパズルにハマっています」「新聞に載るパズルを必ずやります」といった声がよく聞かれます。
このような一人で気楽にできる脳トレでも、毎日続けていると、老化しやすい前頭葉の活性化に役立ちます。
しかし、認知症グレーゾーンからUターンするためには、仲間と一緒にワイワイ楽しみながら行う脳トレのほうが、より効果的です。
Pさん(79歳・男性)は、認知機能の衰えを感じ始めた70歳のとき、脳トレを兼ねて麻雀を始めました。最初の頃は負けてばかりでしたが、もともと負けず嫌いのPさんは、インターネット上の麻雀ゲームで腕をみがき、めきめきと上達。今では仲間うちの誰もが一目置く雀士となりました。
週3日は4人で雀卓を囲み、「よっしゃ、勝った!」「ああ、負けた」という真剣勝負をしているそうです。
こうした人対人で行う勝負事は、前頭葉を大いに刺激するとともに、ドーパミンなどの脳内ホルモンも放出され、脳全体の活性化に大変有効です。
また麻雀は、役を覚えたり、作戦を練ったり、先を読んだり、相手の裏をかいたりと、脳をフル活用します。指先を使うことでも、脳は刺激されます。コミュニケーションがとれるだけでなく、麻雀それ自体にも脳によい刺激を与える効果があります。
そのため、デイケアホームなどで麻雀大会を開催しているところもあるほどです。
麻雀初心者でも、Pさんのようにコンピュータが相手のゲームから始めてみてもいいですね。そこである程度スキルをみがき、自信がついたところでリアルで勝負してみると、そのおもしろさにハマっていく人が結構いらっしゃいます。
すると、わくわく感がどんどん倍増して、脳に最高の刺激となります。
パソコンを使ったオンラインの麻雀ゲームで楽しむのもいいでしょう。見知らぬ人同士であっても、〝対人〟で行うほうが脳の若返りに適しています。
もちろん麻雀にかぎらず、トランプであれ、チェスであれ、人対人で行う勝負事には同じような効果があります。
ただし、1対1よりは、できるだけ多くの人数でワイワイ楽しめるほうが、脳を元気にするためには効果的といえそうです。
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いかがだったでしょうか?
「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。
認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。
認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
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著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。