「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。
ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!
認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。
社交ダンスやフォークダンスで「スキンシップ」を図るといい理由
■ふれ合うことで愛情ホルモンが生まれる
最近、ご主人や奥様と手をつないだり、ハグし合ったりしていますか?
年をとると、家族の間でもスキンシップをとる機会がほとんどなくなります。
とくに日本では、孫を抱っこするのがせいぜいで、親子や夫婦であっても、西洋人のように頻繁にハグし合ったりするケースは少ないでしょう。
これは認知症対策において、とても残念なことです。
肌と肌をふれ合わせることは、愛情ホルモンのオキシトシンの分泌を高めます。このオキシトシンは、アミロイドβという毒性物質による海馬(記憶の中枢)の障害を回復させる働きのあることが、東京理科大学の研究で明らかにされています。
Nさん(72歳・女性)は、70歳を過ぎてご主人を亡くしたあと、一念発起して、社交ダンスの教室へ通い始めました。地域の公民館で開かれているシニア向けの気楽な教室のようでしたが、「男性と手を取り合って踊ることが、こんなにドキドキするなんて」と、乙女のような顔でいつもお話しされます。
社交ダンスを始めてから友人も増え、おしゃれをすることが楽しくなり、最近はネイルアートにも挑戦しているとのこと。最初は戸惑っていた息子さんたちも、そんな彼女の様子を見て、だんだん応援してくれるようになったといいます。
これはとてもステキな生き方で、年齢に縛られない「年甲斐もない生き方」の好例です。Nさんは70歳のときに認知症グレーゾーンと診断されましたが、2年経った現在、認知機能はほぼ正常に回復し、誰よりもイキイキとした人生を送っています。
一つのきっかけで、こんなにも人は変わるのだと、私はNさんから教わりました。
「社交ダンスはちょっとハードルが高い」と思う人は、フォークダンスのサークルに参加するのもいいでしょう。フォークダンスは、決まったパターンの繰り返しのため覚えやすく、次から次へと相手が変わっていくので、「ときめき度合い」が倍増するかもしれません。
もちろん、長年連れ添った伴侶とのスキンシップでもオキシトシンの分泌は高まります。
「何をいまさら……」なんて思わずに、試しに一度、久しぶりに手でもつないでみてください。忘れていた「ときめき」がよみがえるかもしれませんよ。
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いかがだったでしょうか?
「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。
認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。
認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
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著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。