ヒトデの堆肥化から誕生した有効成分
マリン・サポニン
ヒトデに含まれる成分「サポニン」を独自の技術によって液体原料化したのが「マリン・サポニン」だ。安全無害、ほぼ無味・無臭で、カラスや害虫の忌避効果が実証されている。
ロマンを感じるカタチから、欧米では〝海の星〟と親しまれるヒトデだが、漁業関係者にとっては、ホタテなどの海産物を食い荒らす〝海のギャング〟と恐れられている。通常、煮ても焼いても食べられず、ほかに利用価値がないことから、自腹でヒトデを回収し、産業廃棄物として処理するほかないという。この厄介ものを、糞害の絶えない〝街のならずもの〟カラス対策に活用したのが、北海道環境バイオセクターの三國康二代表だ。
「研究を重ねる中で、ヒトデの持つサポニンには人の目に見えない紫外線領域で発光する成分があり、鳥獣に対して忌避効果があると考えました。バイオ技術で液体化を試みたところ、無味・無臭の原料『マリン・サポニン』が誕生しました」(三國さん)
この「マリン・サポニン」を用いた鳥類忌避テープを、カラスの糞害に悩む観光名所・札幌時計台に使うと、カラスがパタっと寄りつかなくなった。カラスは紫外線が見えるため、そのまぶしさに耐えきれず退散したというのだ。さらに「マリン・サポニン」に消臭や殺菌効果があることも突き止め新製品を開発。他社からも乾燥ヒトデが放つ臭いに着目した害獣・害虫の忌避剤が製品化されるなど、ヒトデを有効利用する活路が見いだされている。
三國さんも「『マリン・サポニン』をマイクロカプセル化し、様々な新素材と組み合わせることで、鳥獣忌避製品のイノベーションが可能になる」と、今後に意欲をのぞかせる。
厄介ものの看板を下ろし、ヒトデが鳥害・虫獣害対策のスーパースターとして輝く日も遠くない。
For カラスよけ
北海道環境バイオセクター『SARABA!カラスくん』
札幌時計台の樹木に採用されており、現在も観光客へのカラス糞害対策に役立っている。また製品はテープタイプだけでなく、建物などに使える塗料タイプ『バードコレンジャー』も商品化されている。
For 抗菌・消毒
北海道環境バイオセクター『SAVON(サボン)』
「マリン・サポニン」を配合した固形石けん。洗うだけで肌荒れに直接アプローチ。真菌の一種、トリコフィルメンテなどの水虫菌に作用するほか、肌のかゆみ、湿疹、カビなどにも効果が期待できる。
For 害獣よけ
快適生活『ヒトデdeでんでん』
乾燥したヒトデを粉末にした害虫・害獣忌避剤。臭いによってイノシシやネズミ、ムカデなどの害虫・害獣をシャットアウトする。地面にまく、木や板に吊るす、水溶液にして土壌に染み込ませるなどの活用ができる。
取材・文/安藤政弘