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雨粒、床材、タイヤを電力に!静電気の力で発電する注目の新技術「摩擦帯電ナノ発電機」

2024.05.04

摩擦帯電ナノ発電機(TENG)

 自然の資源を循環させて活用するサステナブルエネルギーに関心が高まっている。中でも注目が2012年頃から研究が始まった「摩擦帯電ナノ発電機(TENG)」。摩擦で発生した静電気を利用して半永久的にエネルギーを生む新しいシステムだ。

 TENG研究で先行する、名古屋大学 未来材料・システム研究所の松永正広助教は、「TENGは周囲の環境の微小なエネルギーを電力に変換する技術『エネルギーハーベスティング』の一種。普段、気に留めてないものから電力を取り出せるのが特徴です」と解説する。世界の研究者が次々と着手し、12年時点で年間6件だった論文の数は、19年に約600件と急激な増加を見せている。

 そんなTENGの優れた点を松永助教は「自由度の高さ」だと話す。

「類似した発電機はあるのですが、使用できる材料が限られています。一方、TENGは空気、繊維、紙など様々な材料を使うことができ、材料の組み合わせも非常に多い。使いたい場所に応じた発電機が作れることも利点です」(松永助教)

 ただ、ナノと付くように、取り出せる電力はほんのわずかだ。

「出力はマイクロワット程度で、スマホやPCを充電できるレベルではなく、IoTセンサーなどの電源として活用が期待されています。静電気によって発生した電圧自体をセンサーの信号に利用することも可能です。例えば、クルマのシートベルトに貼って居眠りなどのセンシングが挙げられます」

 松永助教はこのTENG技術を使って、ウエアラブルデバイスへの活用を目指している。

「電源や回路、通信、センサー一体型の発電シートを皮膚に貼り、健康管理の一助となるシステムを開発中です。服自体を発電機にし、体の動きを無駄なくエネルギーに変える研究も始めています」

 TENGに関心を寄せる企業は多いが、用途が広すぎて絞り込めないことが社会実装への課題。ダンロップと関西大学が共同で開発した「タイヤ内発電」実験など産学連携の動きから生まれるイノベーションに今後注目したい。

 TENGの研究は、米中が先行し、日本は遅れをとっている。社会実装例をいち早く実現できれば、その用途の広さから、身近な再生エネルギーとして生活に普及しそうだ。

摩擦帯電ナノ発電機

摩擦帯電ナノ発電機日常生活でよく起こる「静電気」こそが、TENGの原理の基礎だ。静電気から電気を取り出すことで、小さな電子機器を動かしたり、電力を蓄えたりできる。

静電気が生まれる場所ならどこでも発電できる

雨粒発電

雨粒発電雨粒のエネルギーを電気に変換する技術。ソーラーアレイ発電機につなぎ雨の日も継続的に電力を供給できる。清華大学深圳国際大学院のZong Li教授らの研究チームが考案した。
出典:SPRING WISE「HARVESTING ENERGY FROM RAINDROPS」

タイヤ内発電

タイヤの回転によって安定的に電力を発生させる

タイヤ内発電ダンロップと関西大学・谷弘詞教授が共同開発した。タイヤの内側に発電デバイスを取り付け、タイヤの回転で電力を発生させる仕組みだ。
出典:住友ゴム工業

床材発電

床の上を歩くことによる接触・分離の動作で静電気を発生

床材発電スイス連邦工科大学チューリッヒ校を中心とする研究チームが発表した、人が木床を歩くと発電するTENG。ためた電力でLED電球の点灯が可能に。
出典:Cell Press 「When walked on, these wooden floors harvest enough energy to turn on a lightbulb」

※TENG:「Triboelectric nanogenerator」の略称。トライボ発電、摩擦発電とも呼ばれる。

取材・文/安藤政弘

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