「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。
ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!
認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。
「うっかり忘れ」「すっぽかし」は約束自体を覚えていたかどうかが重要
■単なる老化と認知症グレーゾーンの違い
最近は60歳を過ぎても現役で働く人が少なくありません。年をとっても、豊富な経験を生かした人間力を武器に活躍している人はたくさんいます。
しかし、その結果、現役で働いている人が認知症や認知症グレーゾーンになるケースが増えています。仕事のスキルが落ちるだけでなく、よほど慎重にしていないと、大事な仕事の約束を「うっかり忘れる」といったことが起こりやすくなるのです。
それでも、約束したことは覚えていて、それを反故にした自分にショックを受けているようなら、まだ老化現象の範囲内です。
なぜなら、認知症グレーゾーンになると、メモ帳を見ても、何の約束だったかを思い出せないことが増えてくるからです。
Kさん(65歳・男性)は、加齢とともに記憶力が衰えていることを実感していたので、仕事で誰かに会うときは、いつもスケジュール帳に「この日は誰と、何時に会う」と書き記していました。
そんなある日、その日の予定を確認するためにメモ帳を見ると、「〇〇さん、17時」と書いてありました。通常ならすぐにわかるはずなのに、「え? 〇〇さんって誰だっけ?」「時間はわかるけど、場所はどこ?」と混乱し、その約束をすっぽかすことになったといいます。約束の時間をだいぶ過ぎた頃、先方から電話があり、「そうか、この人と約束していたんだ」とわかり、平謝りして許しを得たそうです。
■家族の気づきポイント
若い頃から生真面目で、約束を破ったことなどない父親が、友人との約束をすっぽかしてしまい、さらには、約束したこと自体を思い出せない。
また、そうした事態を避けるために、スケジュール帳に細かくメモをとっているのに、そのメモを見返している様子がなかったり、メモを見ても「これは何だろう」とつぶやいていたりしたら、認知症グレーゾーンを疑う必要があります。
いかがでしたか?
あなた自身やご家族に当てはまる例はありましたでしょうか。
事例に心当たりのある人や、それ以外にも「最近ちょっとおかしい」と感じている人は、ぜひ読んで、「これは」と思うものから実践してみてください。
それと同時に、認知症の専門外来を受診してみることもおすすめします。
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いかがだったでしょうか?
「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。
認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。
認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
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著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。