「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。
ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!
認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。
「料理を作らなくなる」はグレーゾーンの代表的なサイン
■単なる老化と認知症グレーゾーンの違い
若い頃から料理を作るのが大好きで、子どもが自立したあと、栄養士の資格を生かして自宅で料理教室を始めたJさん(66歳・女性)。
簡単でおいしい料理が評判となり、遠方からも習いに来る人が増えました。
ところが、5年ほど経った頃、Jさんは急に教室を閉じてしまいました。
その後、家族の食事も作らなくなり、台所に立つこともやめてしまったのです。
たまたま私の本を読んだご主人が、料理を作らなくなるのは認知症グレーゾーンの代表的な特徴の一つと知って当院を訪れ、Jさんは認知症グレーゾーンの中期であることがわかりました。
年齢を重ねると、料理をするのがおっくうになることはあります。レパートリーが減り、複雑なレシピが苦手になってくる。これはよくあることです。
しかし、パタリと料理をしなくなってしまったら、認知症グレーゾーンを疑う必要があります。その背景には、意欲と記憶の両方の低下が関係しています。
まず、食材を洗う、刻む、フライパンに油をひいて炒めるといった、基本的な動作はほぼできます。
しかし、前頭葉の働きが悪くなり、判断力が低下するにつれ、調理の段取りが難しくなります。また、記憶力が低下し、料理の手順を記憶しておけなくなりますし、調味料を入れたかどうかも忘れます。さらに、味見をしても味がわかりません。
普段は何気なく行っている料理は、じつは脳がフル稼働していないとできないものなのです。
そうなると、あれほど好きだった料理が楽しくなくなり、こんな料理を作りたい、家族に食べさせたいといった意欲もわいてきません。料理は最高の〝脳活〟ですから、さらに認知機能が低下していくという悪循環に陥ってしまうのです。
■家族の気づきポイント
料理の味が大きく変わった。いつも手際よく調理していたのに最近もたついている。以前はほとんどなかった出来合いの総菜パックが食卓に並ぶようになった。
そんな変化が見られたら、認知症グレーゾーンが疑われます。一方で、たまに子どもや孫が遊びに来たときだけは、奮起して料理をすることもあります。ご両親と離れて暮らしている方は、普段の様子にもそれとなく注意してみてください。
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いかがだったでしょうか?
「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。
認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。
認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
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著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。