「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。
ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!
認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。
「同じものを買ってしまう」のもたまになら単なる老化の範囲内
■単なる老化と認知症グレーゾーンの違い
「昨日、マヨネーズを買ってきて冷蔵庫を開けたら、未開封のマヨネーズがすでにあってびっくり。私ったらうっかり忘れて、もう本当にボケてるわ」
そんなサザエさんのような失敗談は、年齢とともに増えていきます。
けれども、Iさん(62歳・女性)の場合は、ちょっと違っていました。
一人暮らしのIさんは、仕事帰りに買い物をして帰宅し、冷蔵庫を開けたところ、卵の10個入りパックが3つも入っていたのです。
「なんでこんなに……」と絶句したものの、「まあ、必要なものだからいいか」と思い直したIさんでしたが、なんとその翌日に、またもや卵の10個入りパックを買ってきてしまったのでした。
このように、同じものを買うことが「たまにある」のは老化現象ですが、いったん気づいたのにまた同じものを買ってきてしまうのが認知症グレーゾーンの特徴です。
記憶をつかさどる海馬の働きが弱くなった結果、つい最近の出来事を覚えておくのが苦手になってしまうのです。
■家族の気づきポイント
本人にとって「これがないと困る」と思っているものは何度も買ってくるのに対し、人から頼まれたものは買い忘れが目立つようになります。
たとえば、家族に「ビールを買ってきて」と言われても、自分の気になっている買い物で頭がいっぱいなので、人からの頼まれ事は記憶に残りません。すでにたくさん買い置きしているゴミ袋は購入しても、直前に頼まれたビールは忘れてしまいます。
「あれ? 私が頼んだビールは?」という違和感こそ、家族にとって気づきのポイントとなります。
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いかがだったでしょうか?
「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。
認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。
認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
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著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。