「パック入り卵を4日連続で買ってしまった」「身近な人の名前が出てこない」など、最近何かがおかしいと感じることがあったら……それは認知症の警告サイン!?正常な脳と認知症の間にある〝認知症グレーゾーン〟かもしれません。
ちょっとおかしいという異変に気づいたら、認知症へ進む前にUターンできるチャンス!
認知症の分かれ道で、回復する人と進行してしまう人の違いは何なのか。40年以上、認知症の予防と研究に関わってきた認知症専門医の朝田隆さんによる著書『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』から一部を抜粋・編集し、健康な脳に戻るためのヒントを紹介します。
怒りやイライラを感じやすくなってもコントロールできているならふつうの老化
■単なる老化と認知症グレーゾーンの違い
年をとると、誰でもイライラして怒りっぽくなります。
加齢とともに、感情をコントロールする脳の前頭葉の機能も衰えてくるため、これは自然な反応です。とくに現役時代、それなりの地位や役職に就いていた男性は、退職後に若い人から〝単なるおじさん〟扱いされると、「バカにされた」と感じて怒りを覚えがち。その背景には、高齢者自身のプライドと、周囲の人たちのリスペクトが足りないことが大きく関係しています。
それでも通常は、その怒りを言葉や行動で表すことはありません。
しかし、認知症グレーゾーンになると、ブレーキが利かなくなって、TPOをわきまえずに大声で怒鳴ったり、ときには暴力をふるったりするまでになってしまうことがあります。
そこには、単なる老化現象の範囲を超えて脳の機能が落ちてしまったため、自分で自分を制御できないという理由があるのです。
Eさん(69歳・男性)もそうでした。
息子さん家族とレストランで食事をしていたとき、5歳のお孫さんの好きなフライドポテトの皿にケチャップが添えられてないことに腹を立て、大声で責任者を呼んで怒鳴りつけたあげく謝罪をさせたのです。
当院に来られた本人が自慢げにお話しされていたので、間違いありません。
同席していた息子さんが「おだやかな父親だったのに、急に怒りっぽくなり、おじいちゃん子だった息子(孫)も近寄らなくなりました」と涙をこぼしていた姿が忘れられません。
■家族の気づきポイント
もともと気の荒い人は別として、年をとってからむやみに人に怒りをぶつけるような言動が続いた場合は、危険サインと考えていいでしょう。
ときにはEさんのように、人格が変わってしまったように見えることもあります。
また、認知症グレーゾーンではなかったとしても、精神面に何らかのトラブルが起こっている可能性があるため要注意。たとえば、ストレスなどからくる「老年期うつ病」の症状の一つとして、急に怒りっぽくなることもあります。
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いかがだったでしょうか?
「おかしい」と感じてから専門の医療機関を受診するまでに、何と平均4年かかるというデータもあるそうです。その間に、認知症の症状はどんどん進行していってしまいます。
認知機能をセルフチェックし、正しい生活習慣を身につけるためのヒントが詰まった一冊『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』。ぜひ書店でチェックしてみてくださいね。
認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること
発行所/株式会社アスコム
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著者/朝田 隆(アスコム)
認知症専門医
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会 理事長、メモリークリニックお茶の水院長
1955年島根県生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年に筑波大学臨床医学系(現・医学医療系臨床医学域)精神医学教授に。2015年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。2020年より東京医科歯科大学客員教授に就任。
アルツハイマー病を中心に、認知症の基礎と臨床に携わる脳機能画像診断の第一人者。40年以上に渡る経験から、認知症グレーゾーン(MCI・軽度認知障害)の段階で予防、治療を始める必要性を強く訴える。クリニックでは、通常の治療の他に、音楽療養、絵画療法などを用いたデイケアプログラムも実施。認知症グレーゾーンに関する多数の著作を執筆し、テレビや新聞、雑誌などでも認知症への理解や予防への啓発活動を行っている。