■連載/阿部純子のトレンド探検隊
銭湯、無料で読める雑誌ライブラリー、角打ちスタジオと個性的な店舗も
神宮前交差点に4月 17日に開業する、東急プラザ原宿「ハラカド」は、現在営業中の交差点向かいにある、東急プラザ表参道「オモカド」(旧「東急プラザ表参道原宿」)と共に、原宿・神宮前エリアの新しいカルチャーの創造・発信拠点を目指し、ハラカドには75店舗が出店する。
〇小杉湯原宿/チカイチ(地下1階)
昭和8年(1933年)に創業、2021年に国登録有形文化財に指定された、高円寺にある「小杉湯」が、「原宿の町に銭湯を作り、新しいビジネスモデルを作る」ことに挑戦、ハラカド地下1階に「小杉湯原宿」をオープン。小杉湯が高円寺以外に銭湯を開業するのは今回が初となる。
銭湯区画は、高円寺と同様に白いタイルを基調とし、男女それぞれ洗い場が9個、浴槽が3つ。浴槽は高円寺で初代から続くミルク風呂、44度の熱湯と水風呂を用意しており、高円寺と同じく温冷交互浴を楽しめる。2~3人ほどが座れる内気浴スペースも用意。
銭湯絵は著名な銭湯絵師・中島盛夫さんによる富士山で、男女それぞれ絵が異なる。通常の銭湯は8mほどの高天井で、銭湯絵も高い位置に大きくそびえ立っているが、こちらでは天井の制限があるため、間近に銭湯絵が見られる珍しい体験ができる。
洗い場は銭湯特有の固定式シャワーヘッドだが、奥の3席は体が不自由な人でも使いやすいように、高めの席で手持ちシャワーを用意。脱衣所のドライヤーはコインタイマー式で、20円で3分間使用できる。
小杉湯が目指したのは従来からある町の銭湯。原宿という場所柄インバウンドや若い層に向けたサウナ施設ではないかと思われがちだが、あえてサウナは設置せず昔ながらの銭湯文化を大切にした、ターゲットを限定しない浴場になっている。
地下1階は、銭湯を中心とした街「チカイチ」として構成。小杉湯原宿を中心に、アンダーアーマー、サッポロビール、美容家電のMYTREXがチカイチのパートナーとして参加する。
アンダーアーマーはランニングステーションとしてストレッチスペースを用意。ランニング後にお風呂で汗を流しストレッチで仕上げることも。
サッポロビールはビールスタンドを設置し黒ラベルを提供する。お風呂上りの利用だけでなく、ふらりと一杯飲むために立ち寄ることもOK。
花王は「きれい」をテーマにした企画を年間で展開し、オープン時は原点である花王石鹸(現花王ホワイト)をスタートさせる。MYTREXはヘッドスパやマッサージガンなどの美容健康家電を試すことができるスペースを設置する。
小杉湯原宿の営業時間は 7:00-12:00 / 18:00-23:00 木曜定休 入浴料金は大人520円。チカイチ全体の営業時間は7:00~23:00(定休日なし)。
〇COVER(2階)
紙の雑誌の文化の良さを感じてもらうことを目的とした、無料で雑誌が読める雑誌アーカイブライブラリー。出版社や個人からの寄贈で集まったさまざまなジャンルの雑誌約3000冊が年代別に並ぶ。自由に時間を過ごす場所として提供しており、貸し出し、販売は行わない。
待ち合わせや、ショッピングのついでに寄るというシーンを想定しており、立ち読みで手に取りやすい本棚に。神宮前交差点に面した場所で、眼下には原宿の街を行きかう人々を見ながら、懐かしい雑誌を手に取ることができる。
月に1回ごとで企画展を実施、オープン時の4月は創刊号を特集している。また、イベントスペースとして貸し切り利用も可。
〇角打ちスタジオ 「STUDIO SUPER CHEESE」/「スパチー」(3階)
11時から18時はレンタルスタジオ「STUDIO SUPER CHEESE」、18時~23時は角打ち「スパチー」の2つの顔を持つユニークなスタジオ。
スタジオは1日貸し切りレンタルも可能で、例えば小規模なファッションブランドが新作撮影をしながら、インフルエンサーがお酒を飲みながら配信する(貸し切りの際は昼間でも角打ち利用が可能)といった使い方も。
RGBライトのポートレート撮影、3Dポートレート撮影の短時間レンタルも。RGBライト機材、3D撮影機材、等身大ビジョンは無料で貸し出してくれる。
海外では撮影スタジオにバーがあることが珍しくないとのことで、物撮り、ポートレート、撮影会、配信イベントなど様々な要望に応える。
角打ちメニューはワイン各種、クラフトビール、日本酒など。おつまみは缶詰や、店名の通りチーズも充実。
〇IT Cross(3階)
ITを使って世界中の子どもたちを支援する非営利組織「IT Cross財団」の初のリアル店舗。
子どもたちを対象にした楽しく学べるワークショップの開催や、ITリテラシーを題材とした絵本、子どもたちが書いた絵がデザインされた世界に一つだけのTシャツ、ぬいぐるみ、オリジナル紅茶などを販売、展示する。
「情報格差、体験格差をなくすための活動として、いろいろな人が訪れる原宿にリアルに触れ合える場所を作りました。教育の部分がメインではありますが、実際は、お買い物目的で訪れる方が多いので、ワークショップや、子どもたちが遊んでもらえる場所になればと思っています」(IT Cross財団理事 上原彩美氏)
簡単なミッションを達成すると無料でチャレンジできるクレーンゲームも設置。また、保育士やシッターなど、幼児に関わる職種の人に向けた情報発信やイベントも開催していく予定とのこと。
〇Kanro POCKeTラボ(3階)/ヒトツブカンロ 原宿(1階)
オウンドメディア「Kanro POCKeT」をリアルに体験できる、コミュニケーション重視のラボラトリー「Kanro POCKeTラボ」。
オープニングイベントは、カンロと自由学園高等部の生徒が共創して企画した、「思わずシェアしたくなる“ASMR”体験」ができるブースが登場。
来場者が“ユーチューバー”になった気分で会場に設置されたマイクに向かい、「グミッツェル」を食べる咀嚼音動画を自身のスマートフォンで撮影することができる。
販売店舗としては、カンロが創業100周年を迎えた2012年にJR東京駅でオープンした、キャンディショップ「ヒトツブカンロ」2号店がハラカド1階にオープン。
見た目や味だけでなく咀嚼音のASMRも人気の「グミッツェル」などの商品を販売。原宿店限定として、雲の形のマシュマロ「mofuwa(モフワ)BOX 6個セット 原宿限定」(1000円)、「フルーティアロマのど飴 ハラジュクグレープ」(税込550 円)も。
【AJの読み】銭湯に食堂、原っぱも!?“原宿”をキーワードに構築した商業施設
ハラカド3階は、今回紹介したようなクリエイターと企業や人が協業し、新事業を模索するクリエイターズプラットフォームや、地下1階のチカイチといった個性的な店舗のほか、“まちの食堂”をテーマにした飲食店が5~7階に出店している。
4階はカルチャーや新しいエンターテイメントを原宿視点で編集し国籍や性別年齢を超えてボーダレスに体験できる場所を提供。第一弾としてフロア全体を「ハラッパ」と題し、「自然・チルアウト」×「原宿で体験」をテーマにした企画が登場する。
取材・文/阿部純子