いきなり登場!?文化庁の「日本遺産」ストーリー
全国を旅していると、ときどき「日本遺産」という言葉のポスターを見ることがある。
この日本遺産ストーリーとは、東京オリンピック・パラリンピックを契機に増加が見込まれた訪日外国人観光客の受け皿と地域活性化を結びつけるべく、2020年に文化庁が設立したもので、けっこう鮮やかな美しい画像を使ってお金をかけたプロモーションのものを目にすることもあった気がする。
ではどんな内容か見てみましょう。
参照:ストーリー検索|日本遺産ポータルサイト (bunka.go.jp)
ご覧いただけましたでしょうか? まず驚くのは認定されているその数なんと104件! 内容を示すタイトルは、まるでテレビのブラタモリを見ているかのよう。もしかしてタモリさんは番組で今までずっと日本遺産を旅していたのかな?
私は初めて知るストーリーが多いけど、新潟県の『「なんだ、コレは!」信濃川流域の火焔形土器と雪国の文化』や山梨県と長野県の『星降る中部高地の縄文文化』は博物館で同じタイトルの特別展を見たことがある。
どうやら私も自分自身が気づかないうちに、日本遺産ストーリーに乗っかって旅をしてきたのかもしれない。
自治体を越えた、広範囲の地域に渡る自然や文化伝承に光を当てるものもあり、どれも自分がまだ知らない日本を探しに行くような、ミステリアスで興味をそそるものばかりで、これはまさに……ユネスコの世界遺産を強烈に意識した現代版風土記ともいえる試みといえる。
山梨県立考古博物館(山梨県甲府市)
一周回って風土記の丘時代再来?!エコでSDGsな墳ピクがアツい!
結構なお金をかけて推し進められている感じの「日本遺産」ストーリーに比べ、風土記の丘構想はちょっと下火になってる雰囲気が否めないと思われるかもしれないが、実はこのふたつは似て非なるもの。
日本遺産ストーリーは文化財の活用(観光収入)を強めに求めているのに対し、風土記の丘構想は文化財の保存と教育普及(遺跡と人を育てる)が主な目的のはず。
だから正直言って交通が不便だったり、お金を落とせる飲食店もあまりなく、なんなら用地の買収が進まず未完成だったり、予算や人手不足で管理が行き届かないなど困難は多々あれど、風土記の丘は貧富の差無く人々を受け入れ、自然と歴史を体感できるエコでSDGsを好む現代人にぴったりの場所といえるでしょう。
美しい景色や色とりどりの花々が心を癒やし、丘陵を登ることで足腰が鍛えられ新鮮な空気で気分もさわやか。地域の歴史を知ることで学びが広がり脳が活性化されるなど、その身体的効果は無限大!(当社比)
そしてあまり大きな声では言えませんが、たくさんの人が風土記の丘を訪ねてくださることは、きっと何より管理維持してくださっている関係者の皆さんの励みになります。
ぜひ皆さん、お弁当とレジャーシートを持って、風土記の丘で墳ピクを楽しんでみてください。そしてそのときの楽しい様子を、SNSなどで紹介してくれると嬉しいです。まずは多くの古墳を有する風土記の丘構想の理念を広く知ってもらうことこそ、古墳王子たるぼくの使命なのかもしれない。
八雲立つ風土記の丘(島根県松江市)
文/古墳王子
愛知県在住の現役高校生。小学4年生で古墳の魅力に目覚め、西は鹿児島から東は宮城まで延べ2500基以上の古墳を巡りSNSで情報発信中。古墳だけでなく縄文や弥生時代にも目を向け日々各地の博物館に出没し先史古代の珍しい逸品を探しています。
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