入浴による効果 ~「睡眠の質」「心身のコンディション」「運動」に入浴が好影響~
■睡眠の質の改善
20~30代の女性を対象に、シャワー浴後と浴槽浴後を比較したところ、以下のような結果が得られた。
・就床後から入眠するまでの時間である「入眠潜時」の長さは、浴槽浴のほうが短い傾向。
・睡眠中に目が覚めたりする時間である「中途覚醒時間」の長さも浴槽浴の方が短い。
・就床中に実質的に眠っていた割合である「睡眠効率」は浴槽浴のほうが高い。
・また、起床時の気分状態等の主観評価においても、浴槽浴のほうが睡眠状態は良好との結果が得られた。お湯につかる入浴をすることが睡眠の質を高めると考えられる。
■運動を行う上での心身コンディション維持。パフォーマンス向上も示唆
運動を行う上で重要な心身のコンディション維持としても、入浴は効果を発揮する。2012年にバスクリンは専修大学スポーツ研究所とともに、女子レスリング選手11名を対象に、入浴法(浴槽浴またはシャワー浴)がレスリング強化合宿中のコンディションに及ぼす影響について検証を行った。
合宿期間(4日間)の精神状態を示す主観評価では、シャワー浴では、浴槽浴と比較し、常に活気が低く、抑うつや疲労感が高いことが示された。一方、浴槽浴においてはメンタル面の低下を抑制し、入浴することで得られる温浴作用が、就床前の疲労回復感や気分状態を良好にしたと考えられる。
また、2019年には順天堂大学と共同で、運動前の入浴がパフォーマンス向上につながるか検証を行った。運動パフォーマンスを高めるためには、運動前のウォーミングアップが重要だと言われている。ウォーミングアップの主たる効果である「体温や筋温の上昇」を入浴の温熱作用で代替することで、同様の効果があるのか検証した。
入浴をしない場合と、38℃のお湯に10分入浴した後の場合で、ジャンプ力(多関節運動)と膝関節伸展運動(単関節運動)について検証を行った結果、入浴群では、皮膚の表面温度および筋温の上昇が確認され、その後に行ったスクワットジャンプ力(跳躍高)および膝関節伸展運動では、有意な増加を認めた。これらの結果から、運動前の入浴で運動パフォーマンスが向上する可能性が示唆されている。
良質な睡眠を得るための入浴実践方法!~入浴前後の過ごし方も整えて~
快適な睡眠のためには、お風呂の入り方に加えて、入浴前後の過ごし方も大切。入浴を上手に生活の中に取り入れ、よい生活リズムをつくっていくことがポイントとなる。
■入浴する時間にもひと工夫。就寝1.5時間前が目安
心地よい眠りにつくには、「入浴によって一時的に体温が上がり、その後熱が放散されて体温が下がって眠気が生じる時間」を逆算して、入浴の時間を決めるのがおすすめ。おおよそ、布団に入る1.5~2時間前がおすすめ。個人差があるので、自分のベストタイミングを見つけよう。
■39~40℃のぬるめのお湯に10~15分
体をじわじわと温め、深部体温を効果的に上げるには、ぬるめのお湯が一番。ぬるめのお湯は、交感神経が優位になるのを抑制し、身体にも負担がかからない。寝る前に副交感神経を優位にし、脳の興奮を落ちつけリラックスすることで、寝つきがよくなる。おすすめは、39~40℃のお湯に、10~15分つかる入浴だ。
■眠りのための快適な環境づくりも大切
入浴後は、できるだけリラックスできる環境で過ごすこと。これも「よい眠り」のためには欠かせない。まず、部屋の明かりは落とし(暖色系の明かりがベスト)、音は控えめに。快適な室温を保つことも大切だ。
また、布団に入ったときに手足が冷え切っていると、深部温度が下がらずよく眠れないため、お風呂上がりには手足を冷やさないようにしよう。もし冷えてしまったら、湯たんぽなどでもう一度足を温めて。足を温めることによって毛細血管が開き、深部温度を下げやすくする。
さらに、寝るスペースは十分確保すること。大人でも一晩に20回程度寝返りを打つため、「動ける」スペースの確保は大切。睡眠中に動きがとれないと、寝つきも悪くなりがちだ。
■入浴できないときは手軽に足浴、手浴(ハンドバス)でも
入浴できないときは、部分浴がおすすめ。手浴、足浴だけでも、身体はある程度温まる。手浴は、足浴よりも手軽にでき、また早く温まるのでおすすめだ。手浴は、洗面器などにお湯をはり、手首までしっかりお湯につけてみよう。手からじんわり温まって、心地よいリラックス感が得られる。
乱れたココロとカラダを休める 香りによるリラックス入浴法
■日本人になじみの深い「ゆず」の香りの入浴剤で快適度アップ
さら湯と比較して、入浴剤を入れたお風呂に入ったほうが、快適度は高いことが実証されている。これは、入浴剤の有効成分・香り・色などがプラスされ、リラクセーション作用をもたらしたと考えられる。
入浴剤の色や香りは五感に働きかけ、ココロにも少なからぬ影響を与える。個人の好みにも大きく左右されるが、ラベンダーのリラックス感、レモンのリフレッシュ感など、香りによって一定の作用が期待できる。
日本人に馴染(なじ)みのある「ゆず」は、その豊かな香りにより邪気を払うものとして、古くから冬至の湯に用いられてきた。ゆず湯に入ると風邪を引きにくくなるともいわれており、入浴剤としても好まれる香りだ。
そこで、入浴剤(ゆずの香り)を用いて、快適性(リラクセーション)に及ぼす影響を試験した。精神負荷をかけた後に入浴する実験において、入浴剤を使用した場合、さら湯の場合と比較して、入浴中に快適度の高い状態になり、入浴後も維持された。ココロとカラダをととのえるために、ぜひご自身の好きな香りを探してみてはいかがだろうか。
出典元:株式会社バスクリン
構成/こじへい