子宮頸がんの主な原因として知られるヒトパピローマウイルス(HPV)は、中咽頭がんなど他のがんを引き起こすこともある。そのため、男性のHPVワクチン接種は、パートナーの女性を守るだけではなく、男性自身の「がん」の予防にも繋がるのだ(※1)。
海外ではHPVワクチンの男性への接種が進んでおり、国内でも男性の接種費用を自治体が助成する動きが出ている。東京都では2024年4月から、小学6年~高校1年の男性を対象に、区市町村を通じて接種費用の半額を助成することが決定した(※2)。
では、HPVワクチンに関する日本の男性の理解度はどうなっているのだろうか。
PMS(月経前症候群)対策アプリ「ケアミー」を運営するヘルスアンドライツは、 4月9日の「子宮頸がんを予防する日(子宮の日)」に合わせて、15歳から44歳までの男性400人を対象に、HPVワクチンの認知度調査を実施した。
(※1)東京都保健医療局「HPVワクチンの男性への接種について」
(※2)毎日新聞「HPVワクチンの男性接種、東京都が助成 女性と種類に違いも」
男性の半数以上が、子宮頸がんを予防できるHPVワクチンを「知らない」
男性は、子宮頸がんを予防できるワクチンがあるということをどのくらい認知しているのだろうか。
質問したところ、45.7%の男性が「知っている」、54.3%の男性が「知らない」と回答。半数以上の男性が子宮頸がんを予防できるHPVワクチンの存在を認識していないことが明らかに。
では、HPVワクチンを知っている男性のうち、「男性のHPVワクチン接種が、女性の子宮頸がん予防につながる」ことを知っている人はどのくらいいるのだろうか。
「知っている」と回答したのは39.3%、「知らない」と回答したのは60.7%。HPVワクチンの存在は認知していても、そのうち6割は、男性が接種することが女性の子宮頸がん予防につながることを知らなかった。
HPVは、主に性行為によって感染するウイルスだ。そのため、男性がワクチン接種による感染予防をすることで、性交渉によるHPV感染から女性を守り、子宮頸がんの予防につながる。
7割の男性が、男性のHPVワクチン接種が男性自身にも効果があることを「知らない」
さらに、HPVワクチンを知っている男性のうち、「男性のHPVワクチン接種による男性自身への効果」を知っている人はどのくらいいるのか調べたところ、「知っている」と回答したのは32.2%、「知らない」と回答したのは67.8%という結果に。
男性がワクチンを接種することで、HPVが原因となる中咽頭がん、肛門がん、尖圭コンジローマなどの予防に効果が期待できる。
自分自身の健康に影響するにも関わらず、約7割の男性が、HPVワクチン接種による効果を認識していなかった。
調査概要
調査期間:2024年3月12日~3月12日
調査対象:15~44歳の男性400名
調査方法:インターネット調査
※「PMS対策アプリ『ケアミー』調べ」
※構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入しているので、合計しても100%にならない場合がある。
「みんパピ!」代表理事・稲葉可奈子先生に聞く調査結果のポイント
男性はHPVワクチンについて知る機会がなく、女性でもご存じない方もおられるので、HPVワクチン自体を知っている男性が半分以下という調査結果は、無理もないかと思います。
さらに、HPVワクチンは、かつて子宮頸がんワクチンと呼ばれていたこともあり、女性だけに関係のあるもの、という印象の方が多くなってしまっています。
実際には、HPVが原因となる病気、子宮頸がんだけでなく男性もかかる肛門がん、中咽頭がん、陰茎がん、尖圭コンジローマなどの予防につながります。
男性自身が接種することで、男性自身の病気の予防にもなりますし、男性が感染予防することで、将来パートナーに感染させるリスクも下がります。
男女ともに接種率が高いオーストラリアでは国全体でのHPV感染率や子宮頸がん罹患率が下がってきています。 世界約40ヶ国で男性にも公費助成されていますが、日本ではまだ一部の自治体のみです。
ぜひお住まいの市区町村で助成があるか調べてみてください。今後、男性のHPVワクチンも国全体として公費助成(定期接種化)されるよう、国に求めていきたいと思います。
稲葉 可奈子先生
医師・医学博士・産婦人科専門医
一般社団法人「HPVについての情報を広く発信する会」代表理事
京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得。現在は関東中央病院産婦人科医長。医師としての診療業務と、4児の母として育児も楽しむ生活を両立。子宮頸がん予防や性教育など、「生きていく上で必要な知識」の発信に幅広く取り組んでいる。
関連情報
https://minpapi.jp/
構成/Ara