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日常生活ではあまり耳にしないものの、ビジネスでは『所感』という言葉が使われます。『所感』にはどのような意味があるのでしょうか。主な使い方と類義語と解説します。報告書などで所感を求められたときは、正しい理解に基づいて記載することが大切です。
所感とは?ビジネスシーンで使うときの意味
『所感』という熟語の意味がどのようなものかを紹介します。より正しく理解するために、例文もセットで見ていきましょう。意味と使い方を覚えることで、日々のコミュニケーションで『所感』という語を正しく使えます。
■「感想」や「思ったこと」を意味する言葉
『所感』には、『心に感じたこと』という意味があります。『感想』や『思ったこと』とも言い換えられる言葉です。
もともとは仏教用語で、『何らかの行為がもたらす結果』という意味で用いられていました。しかし、現代では仏教用語としての意味は薄れ、感想や思ったこと、気持ちといった意味で用いるのが一般的です。
ビジネスシーンで『所感』という言葉を使うときは、単純な感想だけではなく、事実を分析して分かったことを加えるのが一般的です。具体的には、結果を振り返り、その結果に至った理由を分析して可視化します。
■「所感」を使った例文を紹介
例文から、『所感』という言葉の使い方をより深く学びましょう。ビジネスシーンで使われる例文には、以下のようなものがあります。
- 本プロジェクトの所感としては、テスト工程を自動化したことが開発期間を3週間短縮したことにつながったと感じた
- 所感ではあるが、このまま投資し続けても思ったようなリターンは得られないと思う
- 本件に関しての所感をご記載ください
上記の例文は、いずれも事実を分析して分かったことに自分の感想を加えた文章といえます。物事に対してどのように感じているのか、なぜそのように感じるのかをまとめたものが、ビジネスにおける『所感』です。
報告書・レポートの所感には何を書く?
何らかの報告書やレポートを書くときに、所感を記すように求められるケースがあります。テンプレートの最下部に、所感欄が存在する場合もあるでしょう。報告書やレポートでは、どのような所感を記せばよいのかを紹介します。
■担当した業務の課題や解決策
まずは、報告書やレポートに記入する業務全般を振り返り、高く評価できることと反省しなければならないことを書き出します。その上で、良い結果につながったものはその理由を、反省が必要な部分は具体的な改善策を考えることが必要です。例えば、以下のように書いてみましょう。
- 今月のWebマーケティングの成績は前月比で+150%になったが、これは反応が良かった検証記事の分量を増やした結果と考えられる
- 今月は先月に引き続き、テレアポの件数が少なかった。うまく訴求できていないと感じるため、トークスクリプトの変更が必要だ
ビジネスシーンで所感を求められたときは、単純な感想にならないように注意が必要です。上記を参考に、次につながる情報を盛り込むことを意識しましょう。
■将来の成長につながりそうな要素
所感を書くときには、組織全体の動きに目を向けて、将来の成長につながりそうな内容に目を向けるのもおすすめです。売り上げを拡大するためには何ができるか、組織全体の課題は何かを考え、次のアクションを盛り込むと効果的といえます。具体的な例を挙げると、以下の通りです。
- 伝票処理に多くの時間がかかっていて、事務スタッフの残業が発生している。デジタル化を進めて処理速度を高める必要があるのではないか
- 商品Aの売り上げが徐々に低下している。現行の宣伝方法では対象となる20代前半にアピールしにくいため、今後はSNS広告に注力する必要があると考える
現状を分析した上で、どのようなアクションが成長につながるかを考えると、中身の濃い所感を書けます。
所感と似た意味を持つ言葉
ビジネスシーンでは、『所感』の類義語がいくつか登場します。数ある類義語の中で、今回は耳にする機会が多い『所見』『見解』『講評』の三つを紹介します。
■調査結果や事実を意味する「所見」
調査・分析・観察を通して判明した事実や、それに対する意見を総称して『所見』と呼びます。所感は感想を意味する言葉ですが、所見は事実や意見を意味する言葉です。ビジネスシーンでは、以下のように使われます。
- 今回の街頭調査の結果についての所見をお聞かせください
- 先日実施した調査の結果と所見をまとめたレポートを、専用のフォルダに格納したのでご確認ください
所見と所感は語感が似ていて間違えやすいため、それぞれの違いを正しく理解して、何を書かなければならないか考えることが大切です。
■判断基準や考え方を表す「見解」
『見解』は、判断や考えを意味する言葉です。一例として、『私の見解』と表現したときは『自分の考え』を意味します。ビジネスにおいては、意見を交換する場でよく聞かれるワードです。具体的には、以下のように用いられます。
- 私の見解では、品質を担保できる開発計画Aの方が適している
- 新商品の開発について、担当者によって見解が分かれていて方向性がいまだに定まっていません
『見解』には、感想というニュアンスは含まれていません。そのため、見解を求められたら自分の感想ではなく、考えや意見を述べる必要があります。
■上司が部下に対して行う「講評」
何らかの物事や作品について、理由に基づいて批評することを『講評』と表現します。書籍や映画、論文などに対して用いるのが一般的な表現です。具体的には、以下のように用いられます。
- 本論文について、査読者としてのご講評をいただけますか
- キャリア開発によって新たな発見を得られたとの講評をいただけた
『講評』には、指導者としての批評というニュアンスがあります。どのようなシーンでも使えるものではなく、上位の立場にある人が下位の立場にある人に対してのみ使用できる表現です。
報告書には将来につながる「所感」を書こう
ビジネスシーンでは、報告書やレポートをはじめとしてさまざまな分野で所感を記載するように求められます。所感は感想を意味する言葉ですが、ビジネスでは結果を分析して分かったことに対する自分の意見を交えるのが基本です。
単純な感想で終わらせず、次につながる建設的な所感を書くことを意識しましょう。求められているものに応じた内容に仕上げることで、自分のビジネスパーソンとしてのスキルをさらに高められます。
構成/編集部