株主優待は雑所得になる
株主優待は、配当に該当しない、自社製品、自社サービス利用券、QUOカードなど金銭以外で、株主に会社利益の配分として交付されるようなものをいう。
そして、株主優待は、所得税基本通達(35-1)(24-2)で雑所得に該当すると、明確に定められている。
所得が生じ、基礎控除などの所得控除額を所得が超える場合当然確定申告義務が生じ、税金の納税が必要になってくる。株主優待以外に所得がなければ、株主優待だけで所得控除額を超えることはないだろうが、事業所得や不動産所得等の所得があれば、株主優待を含めた雑所得を申告しなければならないことになる。また、公的年金等の収入、FX、暗号資産などの雑所得があれば、雑所得の収入金額に株主優待も計算に入れなければならないことになる。
会社員は所得税の20万円ルールあり
会社員は年末調整で税金関係が完結するため、「給与収入が2,000万円超」でなければ確定申告は原則必要ない。
しかしながら、給与所得以外の所得である雑所得が生じると確定申告義務が生じるが以下の条件に該当すれば特例として所得税の確定申告義務はない(住民税にはこの特例はない)。
(1)1つの会社から給与所得を受取っている場合
給与所得と退職所得以外の所得金額が20万円以下であるとき
(2)2つ以上の会社から給与所得を受取っている場合で、次のいずれかに該当するとき
・従たる給与収入の金額+給与所得と退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であるとき
・給与収入の金額が150万円+一定の所得控除額との合計金額以下で、かつ給与所得と退職所得以外の所得金額が20万円以下
※給与所得と退職所得以外の所得金額は、収入ではなく所得であるため、必要経費等控除後の所得金額
※給与収入の金額は収入ベースの金額であり、給与所得控除額控除前の金額
つまり、1つの会社からのみ給与所得を受取っている人は、雑所得が20万円を超えなければ所得税の確定申告が不要で、その20万円分の所得に対する所得税は支払わなくても、まあ少額だから多めにみましょうということになっている。株主優待が20万円を超えるほどの価値がある可能性は低いと考えられるため、大抵の会社員はこの20万円ルールで確定申告しなくてもよいことになる。
実際、あなたは申告してますか?
実際、株主優待を雑所得で確定申告している人はどのぐらいいるだろうか。
QUOカードや企業側が自社製品において〇〇円相当と開示しているものもあるが、乗車券や割引券など売却しない限り公正な価格が明確に分からないものも多い。
そして、雑所得は、株式の配当金が一律20.315%課税であり、NISAなら非課税であるのに対し、株主優待にかかる雑所得は総合課税の超過累進税率となり、給与所得など他の所得が高い人は税率が配当金に対する税率の20.315%を超えて最高税率45%になる人もいる。例えば、税率45%の株主優待4,000円相当の自社製品に対する税金は、1,800円になってしまう。
また、会社員では株主優待だけで20万円超える人は少ないだろうが、雑所得には暗号資産や先物取引、FXの利益も含まれるため、それらの所得で20万円超えて確定申告していたとしても、株主優待まできちんと含めている人は少ないかもしれない。
配当金が証券会社を通して振り込まれ、その利益については、証券会社が税務署に特定口座の場合は「特定口座年間取引報告書」、一般口座の場合は「支払調書」を作成して送付している。一方、株主優待については、信託銀行が株主番号を管理し、会社がその情報に基づき株主に届けられる。そのなかで支払調書が作成され、税務署に送付されるわけではないため、現実的に税務署が株式の配当金のように常に把握することが現状できない仕組みになっている。
そのため、株主優待を申告していない理由のみで税務調査となる可能性は低い。実際株主優待まで申告している人はどのぐらいいるのだろうか……。
文/大堀貴子