中国株が不動産関連株下落の影響で低調ななか、マカオのカジノを運営する大手カジノ会社の株価が好調だ。
リュックひとつで夜通しカジノな中国人
中国人は賭け事が好きだ。日本と同じように基本的に賭博は禁止されているが、街中では日本の宝くじと同様、「体育彩票」という国営の宝くじが購入できる。宝くじ売り場は街中のあらゆるところがあるが、いつも人だかりだ。
一方で、日本のようにパチンコのような遊技場はない。また、私の住む広東省では会社経営者、不動産価格高騰により不動産売買で富を得た人がいるが、物にお金をかけない人が多く、見た目は一見富裕層に見えない人がほとんどだ。そのような富裕層が押し寄せるのがマカオだ。マカオは広東省から高鉄(新幹線)で、1時間ほどで行くことができ、中国本土の人はIDカードをかざすだけで入境手続きを済ませることができるため、気軽に行くことができる。実際にマカオに行くと、ゲートを出で各高級リゾートへ行くバスの中は中国人で満員だ。その装いはリュック1つと身軽で、夜通しカジノを楽しむようだ。
実際に、マカオ特別行政区政府統計局公表の2023年実質GDPは前年比80.5%増となった。コロナ禍で落ち込んだところからの急回復であるため、まだコロナ禍前の80%程度の水準ではあるが、カジノサービス輸出は343.7%伸びている。
マカオのカジノ
日本からマカオは、飛行機の直行便なら5時間程度で、時差は1時間。香港への旅行のついでに行くこともでき、ビザも観光なら取得不要だ。
マカオのカジノには、リゾート施設が併設されており、そのホテルや設備は豪華絢爛だ。
カジノ目的の人が多いためか、併設されているプールやショッピング施設にはそこまで人は多くなく、ゆっくりリゾート気分を楽しむことができる。
カジノは24時間営業しているが21歳未満は入場できない。そのためか、子どもを預けることができる施設があり、そこでは子供向けのアクテビティが豊富に用意されており、ファミリーでも、親はカジノ、子どもはアクテビティを楽しむことができる。
カジノ自体は誰でも無料で入場可能で、ドレスコードもなく、中国人はシャツにスリッパという出で立ちだ。
遊ぶためには、まずチップを購入する必要がある。チップ購入には香港ドル、マカオパタカ両方使うことができる。そのまま現金を渡して参加することもできるが、このときは香港ドルのみ対応している。また、チップはすぐにいつでも香港ドルまたはマカオパタカに替えることができる。スロットマシーンのような機械での遊びは少額でもできるが、テーブルゲームでの遊びは最低金額が大きくなる。天井からぶら下がっている電光掲示板やテーブルのところに最低金額が書いてあり、ルーレットなら100HKD(約2,000円)程度(数字のみの場合)からできるが、ディーラーと戦うブラックジャックのようなテーブルゲームの場合500HKD(約1万円)程度からとなっている。
さらに、カジノのなかにガラスで囲まれたエリアがあるが、そこは高倍率エリアだ。約100~1,000万円からの最低ベッド金額のエリアで、高額でかける中国人がたくさんいる。自由に入ることができるため、まわりでただ見ているだけの人もいる。高額のかけ金が一瞬でなくなっても平気そうにしている富裕層がたくさんおり、驚く。
マカオの有名カジノを紹介
現在香港市場が不動産不況による中国景気悪化懸念から下がっていくなか、カジノ銘柄が下げ渋っている。例えば、本日3月7日は日経平均が1.23%安、香港ハンセンが1.4%安のなか、マカオのカジノ銘柄は0.5程度上昇している。各証券会社マカオのカジノ銘柄の目標株価を引き上げており、今後好決算発表があれば株価が上昇する可能性もある。
■Galaxy Entertainment(銀河娯楽)(香港市場、銘柄コード:00027)
「Galaxy Hotel」「ザ・リッツ・カールトン」「JWマリオット」等のホテル宿泊者は無料で利用可能な、世界最大級の流れるプールが併設されている。また、どのホテルに泊まってもカジノへのすぐアクセスできるように、広大なカジノ場となっている。高級ブランド品のアーケード、ショーなども併設。
最も新しく建てられたリゾートの一つで、今後も続々とエンターテイメント施設が増設予定となっている。リゾート気分を楽しみたいならおすすめのホテルだ。
カジノ大手では唯一復配したが、大手のなかでも特に積極的に新開発プロジェクトを行っており、現在のところ財務状況は安定しているが、マカオリゾート事業のシェア拡大につながるか、財務状況悪化の原因となるか分からない。
■Sands China Ltd(金沙中国)(香港市場、銘柄コード:01928)
イタリアのベネチアをテーマにした「ザ・ベネチアン・マカオ」を運営している。
Galaxyから徒歩10分程度のところにあり、ショッピングが楽しめるのが魅力だ。Galaxyが高級ブランド品のみのアーケードであるのに対し、ベネチアンマカオはイタリアのベネチアの街並みをテーマにした室内施設に様々な種類の商品や飲食店が立ち並び、カジノ客だけでなく、様々な層の観光客が来る観光地となっている。
上記2つは、マカオの世界遺産地区のマカオ半島から南に橋を渡っていくコタイ地区あるリゾートだ。下記の2つは、世界遺産があるマカオ半島と同じ地区になるカジノだ。
マカオ半島には老舗のカジノが多く、世界遺産にも徒歩圏内で行ける。
■MGM China Holdings Ltd(美高梅中国控股有限公司)(香港市場、銘柄コード:02282)
MGMマカオを運営。2023年10~12月の連結売上高が76億HKDと前年同期の5.6倍となったことから、大幅に株価が上がった。
■Wynn Macau,Limited(永利澳門) (香港市場、銘柄コード:01128)
マカオ半島にあるウィン・マカオ、コタイ地区にあるウィン・パレスを運営している。ウィン・マカオの1月のカジノ収入が好調であるため、シティグループにより目標株価が8.7HKDへ引き上げられている。現在、6.41HKD(2023年3月17日)。
不動産不況により不調な香港株だが、このように投資妙味のある銘柄もあるかもしれない。
(参考)
2024年2月21日日経新聞「マカオのカジノ株存在感」
文/大堀貴子