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芋なのに香りは柑橘系?若者や女性のニーズにハマる「香り系焼酎」にヒットの予感

2024.04.05

香りは原料由来。芋なのに柑橘系の香りがするわけは?

今、「香り系焼酎」といえば名前が挙がるのが、濵田酒造(鹿児島県いちき串木野市)の「だいやめ〜DAIYAME〜」である。ライチのような香りを漂わせた黒い瓶、2018年9月に発売された本格焼酎界のニューウエーブだ。

2019年に世界三大酒類コンテストのひとつ、「インターナショナル ワイン& スピリッツ コンペティション(IWSC)」で最高賞、2020年に「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)」、2023年「サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション(SFWSC)」の焼酎部門でダブルゴールドを受賞の華々しい経歴を持つ。

「だいやめ〜DAIYAME〜」アルコール分:25%
希望小売価格:1,800ml/2,673円、900ml/1,408円、720ml/1,380円(税込)。

「だいやめ」の香りのわけは原料の芋にある。濵田酒造独自の熟成方法で貯蔵し、「香熟芋」と名づけたサツマイモを使用した。明治元年(1868年)創業の濵田酒造。その150周年を記念しての新製品だった。

■本格焼酎は消費者にどう受け入れられていったのか

「弊社は10年以上前から香りの高い焼酎づくりの研究を続けてきましたが、創業150周年を機に、これまでにない新しい焼酎を世に出したいという思いで出来たのが『だいやめ』です」と、マーケティング本部の脇元信一さんは語る。

その背景には、人口減少に伴う飲酒人口の減少、若者のアルコール離れへの危機感がある。焼酎に限らず、上記の理由からどの酒類も消費量は減少傾向が続いている。その中で、「日本固有の蒸留酒の文化を次代に繋げたい」という思いが焼酎業界に関わる人に共通する使命感だろう。

しかし、いくら果実のような香りを実現した酒が出来ても、それをどう消費者に届けるか。特にこれまでチューハイでしか焼酎を飲んだことがない、つまり本格焼酎になじみのない人たちに、どう伝えていくかが課題として残る。

脇元さんは、「だいやめ」の発売後、かつてないほど積極的に飲食のイベントに出品して、とにかく試飲してもらったと話す。それがSNSで広がり、小売店や飲食店に「そちらは『だいやめ』ありますか?」という問い合わせが増えていったという。2020年から見舞われたコロナ禍の最中にはオンラインでイベントを継続。現在も販売数は伸長している。

■功を奏した炭酸割の提案

もうひとつ、「だいやめ」は従来の焼酎と異なるアプローチをした。「炭酸割り」である。

「以前は本格焼酎の定番といえばロック、水割り、お湯割りでした。私も20年ほど焼酎を飲んできましたが、炭酸割りで飲んだことはなかったのです。しかし、『だいやめ』のライチの香りをもっともよく引き出せるのは炭酸割りでした」(前出・脇元さん)

それまで本格焼酎の世界では、ともすれば邪道と言われてしまう炭酸割りだが、初めての焼酎、初めての本格焼酎の人に大好評!爽やか、すっきり、飲みやすい、食事に合うなど、さまざまなニーズにピタリとはまった。

「だいやめ」とは晩酌で一日の疲れを癒し、明日への英気を養うという意味の鹿児島の方言。和食に限らず、食中酒に楽しめる焼酎。

さつまいも本来の香り成分から生まれる豊かな果実香

「だいやめ」と並び、香り系焼酎で高い人気を博すのが国分酒造(鹿児島県霧島市)の「flamingo orange(フラミンゴオレンジ)」だ。2018年6月に発売された。斬新なラベルが特徴で、毎年3月と6月に発売される。今年も3月15日に発売開始している。

「flamingo orange(フラミンゴオレンジ)」アルコール分:26%
小売希望価格:1,800ml/3,190円 (税込)、720ml/1,518円 (税込) 

その名にあるオレンジのような柑橘系の香りが力強い。芋焼酎なのに、なぜこれほど柑橘系の香りがするのか。

国分酒造の笹山護さんは、「芋焼酎にはモノテルペンアルコールという特有の果実香・柑橘香につながる成分があります。これはワインやグラッパなどにも含まれます。サツマイモにはブドウと同じ香りの成分を持っているのです」と説明する。

実は、「flamingo orange」に先立つこと5年前、2013年に国分酒造は「安田」という焼酎を発売している。

「傷んだ状態の蔓無源氏(つるなしげんぢ)というサツマイモで仕込んだ焼酎を半年ほど寝かせた頃から柑橘系の香りが出て来ました。これが思いがけず、いい香りに仕上がったのです」

モノペルテンアルコール値を計ったところ、とても高い数値が出た。狙って造ったというより、いわば偶然の幸い。「安田」という名は国分酒造の杜氏の名である。杜氏を務めて20年、集大成の1本に自らの名を冠した。

本格焼酎の市場を探る中、香りに注目した製品開発はこの頃から本格化していく。この後、国分酒造では原料の芋、麹、酵母などの組み合わせも研究を続け、2018年に出来上がったのが「flamingo orange」だ。サツママサリという品種の芋に、イモ麹、「鹿児島香り酵母1号」を使用し、減圧蒸留で製造した。

ちなみに、焼酎は通常の気圧で、90〜100℃で蒸留される。これを「常圧蒸留」という。多くの芋焼酎はこの方法で蒸留されている。真空に近い気圧で、50℃くらいで蒸留するのが「減圧蒸留」だ。

「バナナの香りが出るかと予想していたところ、オレンジの香りが出たので驚きました。

製法や原料によって、焼酎の風味はまだまだ広がっていくでしょう。炭酸割りがおすすめで、これまで本格焼酎を飲まなかった方にも楽しんでいただいています。目立つところでは、30〜40代の女性のお客様が増えました」(前出・笹山さん)

ハイボール人気の復活もあって、炭酸割りは大人気だ。次はどんな料理と合わせるかである。

取材・文/佐藤恵菜

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