チューハイでおなじみの焼酎だが、それは甲類……と言われて「ん?」となる人も多いだろう。
今回紹介するのは、焼酎本来の味と香りに特徴が出る「本格焼酎」、中でも最近ジワジワと存在感を高めているオレンジやマスカット、ライチ、青リンゴなどなど果実の香り高い「香り系焼酎」である。焼酎市場に今、何が起きているのか?
第4次焼酎ブームが始まろうしている
はじめに、焼酎には乙類、甲類という分類がある。
チューハイやサワーで使われる焼酎は、アルコール分35%前後の「甲類」である。スーパーの酒売り場で「ホワイトリカー」の名で並んでいるのも甲類。梅酒やりんご酒など果実酒を造るのに欠かせない。風味については表現するのは難しいくらいサッパリとして、香りはひたすらリカー(蒸留酒)である。
■香りの決め手は「甲類」か「乙類」か
対して、乙類はアルコール分25%前後。アルコール分の差は蒸留方法の違いによるもので、甲類は連続式蒸留といって連続して蒸留することで不純物を取り除き、アルコール分を高めることができる。
同時に、原料由来の風味も飛びやすい。乙類は単式蒸留といい、1回しか蒸留しないため、原材料由来の味や香りが残りやすい。今、人気上昇中の香り系焼酎は本格焼酎、乙類である。
■実は何度も訪れている焼酎ブーム
その焼酎のブームをちょっと振り返ってみよう。1970年代後半に「お湯割りブーム」が起きる。あたたかい酒といえば日本酒だった時代、一気に焼酎が広がった。続く1980年代にはチューハイ、缶チューハイの大ブームが到来。チェーン展開の居酒屋人気と相まって、手軽さ気軽さで国民的な酒となる。
そして20年ほど前の2000年代前半のこと。それまで本格焼酎といえば麦焼酎が主流だったところに芋も参入。さらに健康志向の高まりの中、焼酎の「プリン体ゼロ」「糖質ゼロ」が注目され、雑誌や健康番組で取り上げられる。プリン体ゼロ糖質ゼロはウイスキーも同じだが、健康志向の高い老若男女、中でも女性たちの間で一気に焼酎の存在感が高まった。
その後の韓流ドラマブームの影響もあった。NHK BSで『冬ソナ』が放映されたのは2003年である。韓流ドラマ・映画の飲み屋シーンで必ずと言っていいほどテーブルに載っている緑の瓶。日本では「JINRO」の名で知られる有名メーカーの韓国焼酎「チャミスル」である。
この緑の小瓶、今ではオレンジ、ストロベリー、グレープフルーツ、マスカットなどなどのフレーバーの種類の多さでも知られる。
日本酒でもビールでも、近年注目されているのは果実を感じさせる香りだ。
バナナやリンゴ、メロンなどの香りを漂わせた吟醸酒が日本酒市場を活気づけている。ビールの世界では以前からベルジャンホワイトのバナナやハーブの香りが知られているが、IPAの大流行で、マンゴーやパッションフルーツなど香りの幅を広げている。
本格焼酎はどうか?そこで香り系焼酎。2000年代のブームを第3次とすれば、香り系焼酎は第4次ブームの予感がする。