主要企業の決算時期が迫り、今年度の市場動向に関心が集まる中、三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩氏によるリポートが到着したので、概要をお伝えする。
3つの注目ポイントは企業業績、企業改革、賃金、企業業績は2024年度も回復傾向
2023年12月5日付リポートでは、日本株の先行きを展望するにあたり、注目しておきたい3つのポイントとして、「企業業績」、「企業改革」、「賃金」を挙げた。そして、いずれも今後、改善傾向が確認されれば、日本株にとって強い追い風となり、一段の株高も期待されると解説した。
3つの注目ポイントについては、2024年2月14日付レポートで進展度合いを一度検証したが、今回、改めて現時点での状況を整理する。
まず、企業業績について、アナリストが予想する東証株価指数(TOPIX)構成企業の12か月先1株あたり利益(EPS)をみると、増加基調にあることがわかる(図表1)。
また、三井住友DSアセットは国内主要企業を調査対象としているが、金融とソフトバンクグループを除く372社の業績は、2023年度、2024年度ともに増収増益の見通しで、企業業績の回復は続くと考えられる。
■資本効率改善の取り組み開示が進み企業改革も進展、平均賃上げ率は33年ぶりの高水準へ
次に、企業改革について、2023年3月31日の東京証券取引所(以下、東証)の要請に基づき、企業は資本効率改善への取り組みと開示を進めている。
東証が2023年8月29日に公表した資料によると、プライム市場において、取り組みを開示済みおよび検討中とした企業の割合は30.7%(対象は3月期決算企業)だったが、2024年3月15日の公表資料では58.5%(対象は全企業)に増加。企業の取り組み開示は着実に進展している。
そして、賃金について、労働団体の「連合」が公表した2024春季生活闘争(春闘)の集計結果によると、基本給を底上げする「ベースアップ(ベア)」と「定期昇給」を合わせた賃上げ率は、第1回回答で平均5.28%、第2回回答で平均5.25%となった。
2024年の平均賃上げ率は、2023年実績の3.58%を上回る見通しで、最終集計(7月上旬頃)でも5%を超えれば、1991年以来33年ぶりの高い水準となる。
■業績は企業自身の予想、企業改革は開示の中身、賃金は実質賃金が今後の焦点
このように、企業業績、企業改革、賃金は、いずれも改善傾向が確認されており、実際、日経平均株価の動きに目を向けると、2023年12月5日の終値は3万2775円82銭だったが、2024年3月22日の取引時間中に一時4万1087円75銭の高値をつけるなど、水準を大きく切り上げた。
ただ、その後、日経平均の上値はやや重くなっており、3つの注目ポイントについて、ここまでの改善傾向は、いったん織り込まれた可能性が高いと思われる。
今後、企業業績は、企業自身の2024年度の予想で回復傾向が確認されること、企業改革は、開示の割合ではなく、開示の中身がより重要となり、投資家の高い評価が得られるような開示内容が増えること、賃金は、実質賃金の前年同月比の伸びがプラスに転じていくことが、焦点になると考えられる(図表2)。
これらの動きが確認、もしくはその期待が強まれば、日経平均は再び上昇基調を強めることが期待される。
◎個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
構成/清水眞希