車名のDSは聞いたことのない人もいるだろう。DSはフランスのブランドで、2014年にシトロエンから独立した。目的はフランスらしい高級車を造ること。そもそもフランス車といえば、大衆車中心の市場だった。クルマを生産の道具と考えていたので、ゴージャスさやスポーツ性能を重視したクルマ造りはほとんど行なわれていなかったのだ。
しかし、世の中の動きが変わり、フランス国内でも高級感やクオリティーの高いクルマを求める人たちが増えてきた。そこで、シトロエンはDSというブランドを立ち上げたのだ。フランス版レクサスとでも言うべきか。
コンパクトでラグジュアリーなSUV「DS3」
「DS3」は、新ブランドの第2弾として2019年にデビュー。デビュー当初は「DS3 CROSSBACK」と名乗り、コンパクトでラグジュアリーなSUVとして登場した。しかし、時代の流れの中でSUV的なイメージが薄れていき、2023年5月のマイナーチェンジから「DS3」と名乗るようになった。
もちろん、クルマの基本型は以前と同じで、外観、内装、インフォテインメントシステムなどは改良を施している。一番の違いは、パワーユニットが直4、1.2Lガソリンから直3、1.5Lディーゼルターボに変わったこと。その結果、最高出力は130PSで同じだが、最大トルクは70Nmも増えて300Nmとなった。ただし、車両重量はガソリン車より50kg重くなり、1330kgとなっている。ミッションは8速ATで前輪駆動。この組み合わせは変わっていない。
外観は、フロントグリルのイメージが変わった。変型の横長ヘッドライトは同じだが、その下両側に縦長のデイタイムランニングライトを配している。グリルも下に延びダイナミックな印象になった。サイドのデザインは特徴的なBピラーの形状はそのまま踏襲されている。また18インチのアルミホイールのデザインは新しくなっている。リアはゲート部分に「DS AUTOMOBILES」のエムブレムが付いたことが大きな変化だ。
インテリアも充実している。ダッシュボード中央部のスイッチや、シート表皮にダイヤの型をモチーフにした形状を採用。素材もピアノブラックにするなど、高級感を演出しているのもDSらしい部分。装備も最新鋭のインフォテインメントシステムを採用した。トラフィック情報を入手可能なナビシステムも利用できる。
さらに、日本語によるボイスコントロール機能にも対応している。「OK、アイリス」と呼びかけることで、目的地やエアコンの温度設定、電話の発着信、天気予報などが操作できるようになった。このような画面操作のためにモニターサイズも、7インチから10.3インチへと拡大した。さらに安全装備として、車両周囲の状況を画面に表示する「360度ビジョン」を採用している。
内装は、この他に自動で照射範囲をコントロールするマトリクスLEDビジョンや、シート、ダッシュボード、ドアトリムにナッパレザーを使用するなど、CROSSBACKというネーミングを取り去り、上級車になった「DS3」らしい装備も標準化されている。運転席に座った時の印象も上級感が感じられる仕様だ。