3月下旬、待ちに待ったペルソナ3Fがやって来た。色合いは思った通りの深いグリーンで光沢も綺麗だ。30代の時に乗っていたクルマの色に似ていて、いよいよ気に入る。セッティング時は陽がささず、緑というより黒に見えた。その時々の光の加減によってスピーカーの定番色の黒だったり、個性的なグリーンだったり、あるいはそのグラデーションだったりと変化するのが愉しい。画像のようにウッディで落ち着いたインテリアから、モダンでアグレッシブなインテリアとなった。スピーカー・デザインのモード感には、上2つのユニットに付く音響レンズの視覚的効果も大きい。
前編はこちら
音響レンズ。カタログに“僅かな位相のズレさえも解消し、相互干渉による音の濁り、歪みを低減。リニアリティ、指向性をも向上させ、見通しのよい、細部まで美しい音の再現を可能にします”とある。
試聴機で聴いた音の足元にも及ばない理由とは?
では、肝心の音だ。例によってツェッペリンのUSマトC/PR工場『Ⅰ』の「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」をかけるや、唖然とした。LINN AKUBARIKではブンブン鳴っていた低音はパコパコ、気が抜けたような音。高音もキレがない。試聴機で聴いた音の足元にも及ばない。インポーター氏に尋ねると、エイジングされていないので致し方なく、これから聴き込むことで音がどんどん良くなっていくという。エイジングとは、時間と共にスピーカー・ユニットの動きが良くなり=振動しやすくなり、音のクオリティーが上がっていくという意味だ。ただしその歩みは遅く、3歩進んで2歩退がるイメージ。聴いていると音はだんだん良くなるが、エイジング完了には最低でも200~300時間は要するとのこと。それはそれで日々進化が楽しめて、時間たっぷりのリタイヤ世代には好都合だ。
あれ、でも前の前のスピーカー(ATC SCM20)から前のスピーカー(LINN AKUBARIK)に替えた時は、いきなりドンと音が良くなって鳥肌が立ったぞ。だが考えてみれば、AKUBARIKはSCM20の約3倍の価格だ。エイジング以前の、ポテンシャルゆえのことだろう。さらに考えれば、AKUBARIKは約10年に渡ってロックを再生してきた“超熟”モデル。僕がよく行くロック・バーのスピーカーも、小型のブックシェルフ型ながら恐ろしいほどに低音が出る。“超熟”と“新生児”を同じ土俵で語るのは、無理があるか。
音も時間と共に変わっていくが、スピーカーの色も光の加減で変わっていく。
さてあれこれ聴いておよそ3時間、再び「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」を聴くと、これは!! ブンブンとまではいかないがパコパコではなくなり、高音もクリアーになった。わずか3時間でこうも変わるとは。岩田さんのアドバイス、「ラジオでも何でもいいし小音量でいいから、スピーカーから音を出し続けるとエイジングが進む」を思い出す。幸い我がシステムは、テレビの音もスピーカーから出している。そのテレビはおおよそ朝の7時半から午後1時半、午後6時から深夜の2時くらいまでつけっぱなしというライフスタイル。スピーカーは1日にテレビで14時間稼働、プラス僕のロック・リスニング・タイムに稼働するので、エイジングをどんどん進むはずだ。