2009年9月以来、X(旧Twitter)への「あるあるネタ」投稿をほぼ毎日続けている、お笑い芸人のつぶやきシローさん。先月末には、約15年の「つぶやき」からセレクトしたものをまとめた本が発売に。今回はその個性的なブックデザインの秘密に迫る。
祖父江 慎+志間かれん
祖父江慎さん。アート・ディレクターとして活躍。日本のブックデザインの最前線を走り、代表を務めるコズフィッシュで活躍中。左はスタッフの志間かれんさん。
「あるあるネタ」を15年間ほぼ毎日投稿!つぶやきシローさんがつぶやき続ける理由
2009年9月以来、X(旧Twitter)への「あるあるネタ」投稿をほぼ毎日続けている、お笑い芸人のつぶやきシローさん。先月末には、約15年の「つぶやき」からセ...
「デザインの余白はつぶやきさんの立ち位置そのもの」
デザインを手がけたのは、独自の世界観で数々の話題作を手がけるブックデザイナーの祖父江慎さん。自らが率いるデザインオフィスのメンバー・志間かれんさんとタッグを組んだ。
「つぶやきさんはものすごく〝素〟な人。変におもしろがらせようとせず、普通に感じたことを普通に言う。ひねらないところがすごい。Xをやっているのに、情報に対して非積極的なところもすごくおもしろいと思いました」(祖父江さん)
インプットに前のめりではなく、自分の視点で淡々と。その姿は、志間さんの目にも新鮮に映ったようだ。
「映画も見ないし、漫画も小説も読まないと聞いて、本当に〝素〟のまなざしから生まれるつぶやきなんだなと感じました」(志間さん)
デザインは、そういったつぶやきさんらしさも存分に反映して構築されている。
「表紙や『はじめに』以外の本編は、センターに文字を配置していません。つぶやきさんはど真ん中にはいない人だと思ったからです」(祖父江さん)。なるほど、確かに本人も、『小中高と、いつもクラスの中で人気者にはなれないタイプだった』と語っている。文字の配置は、つぶやきさんの立ち位置そのものなのだ。
また、Xというメディアの特性も、デザインを考えるうえで大切にしたという。
「文章がサラッと読めてしまうと、Xらしくないなと思いました。ひとつひとつの読みやすさは大事ですが、あっちに行ったりこっちに行ったりして着く感じがXっぽいと思って、意識して構成しています」(祖父江さん)
つぶやきシローという芸人とXの親和性を表現したようなデザインに注目だ。
『リモコンの電池を換えてて、ちょっとでもテレビに気を取られると、あれ?新しい電池どっちだっけってなるね。』
こだわりPOINT_01
紙は1冊通して同じものを、厚さだけ変えて
「つぶやきさんは『無駄に飾らない』ことを大事にしていると感じたので、同じ上質紙で通しました」(祖父江さん)。表紙、見返し、「はじめに」、本編と、少しずつ厚さを変えている。
こだわりPOINT_02
カバーには〝ひっそりと〟箔押しを
同色なので気づきにくいが、表紙には一部分に箔押しが施されている。「箔を押したいと伝えたら、『金とか銀とかは嫌かな……』とご本人から。〝らしい〟ですよね」(志間さん)
こだわりPOINT_03
文字組みにも著者の〝素〟を反映して
投稿は右端、追いつぶやきは左側で、センターの余白は残して配置。「つぶやきさんの立ち位置は端っこ。投稿時間にも彼の葛藤が表われているから、日時も入れてます」(祖父江さん)
取材・文/坂本祥子 撮影/タナカヨシトモ