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他山の石という言葉を見聞きしたことはあるだろうか。他山の石は中国最古の詩集「詩経」の言葉を由来とする故事成語。誤用されることも多い言葉のため、使用する際は正しい意味を理解して使う必要がある。
本記事では、他山の石の意味や例文、ありがちな誤用などをわかりやすく紹介する。他山の石の正しい使い方を把握して、語彙のバリエーションを増やしてほしい。
他山の石とは
他山の石という言葉を聞いたことはあるものの、自ら使ったことはない方も少なくないだろう。まずは他山の石の意味をあらためて確認し、会話で使う際の例文を見ていこう。
■他山の石の意味
他山の石は「たざんのいし」と読み、他人の良くない言行を自分の成長の糧とすることを指す言葉。
「よその山から出た、つまらない石」の意味が転じて、上記のような意味が生まれた。
あくまでも良くない行動が対象となる表現であり、「良い行動を参考にする」という意味では使えないので注意しよう。
■他山の石の由来
他山の石は中国最古の詩集「詩経」の言葉に由来する故事成語。「他山の石以て玉を攻むべし」という漢詩が元となっており、これは「他の山から取ってきたつまらない石も、自分の玉を研ぐ砥石としては役に立つ」の意味を持つ。転じて、現在使われている「他山の石」の意味になった。
■他山の石を使った例文
他山の石を会話で使う際は、以下のように使用する。
【例文】
・他人の失敗を他人事と捉えず、他山の石とすることが重要だ
・過去の事例が他山の石となって、業界全体が発展する
・自己研鑽のため、他山の石という言葉を胸に刻んでおこう
他山の石を使う際の注意点
他山の石は字面だけでは意味が分かりづらいため、誤用も多い表現。ここからは、他山の石を使う際の注意点を見ていこう。
■「対岸の火事」とは意味が異なる
対岸の火事は、他人にとって重要な事件が、自分には無関係であることを指す例え。他山の石が他者の失敗を顧みる意味を持つため、およそ反対の意味を持つ言葉といえるだろう。
【例文】
・他社で重大な汚職が発覚したようだが、弊社にとっては対岸の火事である
■「他山の石とせず」は誤用
他山の石によくある誤用としては「他山の石とせず」が挙げられる。
他山の石には「参考にする意味」が含まれているため、それを否定すると「参考にしない」という意味になってしまい、本来の意味とは反対のニュアンスになってしまうため注意しよう。
他山の石を「他の山のどうでもいい石」と誤認してしまうと、上記の誤用につながりやすい。
■「他山の石とする」は失礼にあたることも
他山の石は、使い方によって失礼に当たる場合があるので注意が必要だ。他山の石は「悪い事例を参考にする」という意味であるため、良い事例を参考にする際には使えない。
例として、上司の良い行動を見て「他山の石にします」と言ってしまうと、その行動を悪い事例として捉えていると解釈されてしまうので注意しよう。
他山の石の類語
ここからは、他山の石の類語を紹介する。言い換え表現で語彙を増やし、会話のバリエーションを広げてほしい。
■人のふり見て我がふり直せ
人のふり見て我がふり直せは、他人の行動を参考に自らの行動をあらためる意味で使われる。他山の石と異なり、行動の良し悪しを問わず使用できる点がポイントだ。
【例文】
・他人の非難ばかりしている人には、人のふり見て我がふり直せと伝えたい
■人を以て鑑と為す
人を以て鑑と為すは「ひとをもってかがみとなす」と読み、他人の行動から学び取る意味で使われる。こちらも行動の良し悪しを問わず使用できる点が他山の石との相違点だ。
【例文】
・人を以て鑑と為すことは、自己成長に欠かせない習慣だ
■反面教師
反面教師は他人の悪い行動や姿勢を見て、自分の行いを反省する姿勢を指す言葉。悪い行動のみを対象にした表現であり、他山の石に近いニュアンスで使われる。
【例文】
・あの人の行動を反面教師として、私は行動を変えた
他山の石の対義語
ここからは、他山の石の対義語を紹介する。類義語と合わせて確認し、表現の幅を広げてほしい。
■薫陶
薫陶(くんとう)は徳をもって人を感化・教育することを指す言葉。つまり、薫陶を受けるとは他人の優れた面から良い影響を受けることを意味する。他山の石が悪い行動を対象とすることと反対の意味といえるだろう。
【例文】
・恩師から薫陶を受けたからこそ、今の私がある
■朱に交われば赤くなる
朱に交われば赤くなるは、人は関わる相手次第で良くも悪くも変化するという語意を持つ。他山の石が自らの改善を行うことに対し、悪い影響を受ける際にも使える点で異なる表現だ。
【例文】
・人は朱に交われば赤くなるものだから、人付き合いは慎重に行うべきだ
■爪の垢を煎じて飲む
爪の垢を煎じて飲むとは、優れた人の爪の垢を薬として、自分が成長を心掛ける姿勢を指す言葉。優れた行動を対象とする面で、悪い行動を対象とする他山の石とは異なる。
【例文】
・あの人の爪の垢を煎じて飲むくらいの気概で頑張ってほしい
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部