■連載/阿部純子のトレンド探検隊
糖質ケアをしている家族も健康な家族も同じ「白いごはん」が食べられる!
味の素は、炊飯のときに入れるだけで、ごはんのおいしさはそのままに玄米並みにGI値(=グリセミック・インデックス/食後血糖値の上昇度を示す指標)を下げる、炊飯器専用調理料「白米どうぞ」を開発。3月21日より「味の素ダイレクトオンラインショップ」にて販売を開始した。
「白米どうぞ」は、味の素における長年の酵素技術を活かし、9年をかけて開発した白米のでんぷんを分解されにくい構造にする、日本初の技術(特許申請中)を使った商品。
開発の経緯や発売の狙いなど、「白米どうぞ」プロジェクトマネージャーの竹澤拓也氏(下記画像右)と、同商品の開発を担当した上村佑也氏(同左)に話を伺った。
「白米どうぞ」を入れて炊いたごはんは、酵素の働きによって白米のでんぷんが分解されにくい構造になるため、糖質の吸収が穏やかになる。ターゲット層は、糖質制限のある食事をしている人やその家族だ。
「糖質制限のある食事に取り組んでおられる方は、大好きなごはんやパン、麺類を我慢して、食べたいと思いつつも玄米やこんにゃく米、糖質オフ製品を摂っています。私たちが、糖質制限されている方やそのご家族にインタビューを行ったところ、糖質ケアはご本人はもちろん、ご家族の方にも大きな負担となっていることがわかりました」(竹澤氏)
「健康な家族用に普通の白米、糖質制限をしている家族用に玄米と、炊飯器2つを使って炊き分けている」、「健康のために玄米にしても、白米が好きな世代にはその気持ちを汲み取ってもらえず“おいしくない”と言われて食事を作るのが辛い」、「炊き分けるのが苦労なので、家族全員玄米食にして、育ち盛りの子どもにも玄米を食べさせている」、「カレーや丼メニューには玄米だと合わせにくい」など、さまざまな苦労がインタビューから浮き彫りになった。
「糖質ケアの課題が家庭の中に生じていることがわかり、白米を玄米と同レベルのGI値に下げることができる製品を開発したら、炊き分ける必要もなく、ケアされているご本人もごはんを食べることができる、とても価値のあるものになるのではないかと思いました。
インタビューの際にも、『もしこういう製品があれば今すぐ欲しい!』と話される方も多く、ぜひ開発しないといけないという想いで、様々な苦労もありましたが、それら乗り越えて開発に至りました」(竹澤氏)
「白米どうぞ」は、味の素の約30年にわたる酵素技術を応用した製品。開発を担当した上村氏はおいしさや食感を追求する食感制御グループに所属、味の素における酵素技術開発をリードしてきた一人でもある。
「食感制御グループでは、約30年前から酵素使って食感を調整しながら、おいしさ全体を設計する技術の開発を行っています。『白米どうぞ』は酵素研究を健康価値に活かした製品です。
酵素はさまざまな種類があり、働きもそれぞれありますが、例えばパイナップルとハムを合わせた『ハワイアンハムステーキ』は、パイナップルに含まれるブロメラインという酵素がタンパク質を切ってくれるので、ハムの食感がやわらかくなります。
今回は対象がお米ですが、お米のデンプンはブドウ糖がたくさん連なって鎖のようになっており、そこからまた枝分かれしています。お米を炊くと、デンプンが水分をくるんでやわらかくなります。
炊いたごはんを1日置くと食感が硬くなってしまいますが、それは枝が絡み合って水分が出ていってしまうためです(下記画像参照)。炊き立ての食感を維持させるために、当社の独自酵素を使って鎖の絡みを抑制することで、水分を保ち老化に対する耐性を作って、おいしさを維持させることが可能になりました。
この技術は10年ほど前から使われていまして、コンビニやスーパーの総菜など、作ってから食べるまで時間があいてしまう商品に活用されています。
この技術を発想転換させて、糖分を吸収しにくくさせたのが『白米どうぞ』の技術です。デンプンはごはんのおいしさを生み出すグルコース(ブドウ糖)の塊で、あまり抑制しすぎるとごはんの味も変わってしまうため、糖質の吸収を抑えながらおいしさを維持させるところに非常に苦労しました。
玄米並みにGI値を下げることを目標に開発を進めましたが、酵素は多くの種類があるので、組み合わせなど200以上の酵素を検討しました。ラボの研究では良い結果が出ても試験ではまったく結果が出ないこともあり、試行錯誤を繰り返して、製品化まで9年を要しました」(上村氏)