アサヒ飲料のホットドリンク『白湯(さゆ)』が、2024年の冬もヒットを飛ばしニュースになった。
実はこの商品、約10年前に1度販売したものの売れなかった過去があり、2022年に再販したところ想定の約3倍の売れ行きで定番商品化したという経緯がある。
そこで今回は、ペットボトルタイプのホットドリンクに革命を起こした『白湯』ヒットの背景や、自販機やスーパーで見かけた新発想&変わり種のドリンクを紹介する。
天然水を “温めただけ” の『白湯』がヒットした背景
ほんの15、6年前くらいまでは、「出先で水を買う」という発想が今ほど浸透していなかった。コンビニや自販機で水を買うと「わざわざ水を買うの?」と言われた記憶もある。
今では美容と健康のために水を飲む習慣が広まり、水分補給のためにペットボトル入りの水を買うのは年齢性別関係なく普通のことになっている。
白湯にもこれと同じことがいえる。アサヒ飲料『白湯』のヒットは、日本に白湯を飲む文化が浸透したこと=白湯の需要が高まったことが大きな理由だろう。
白湯には体を内側から温めて代謝を促進する作用があり、習慣的に飲むことで健康効果や美容効果が期待できる。もともと健康や美容に良いとして中高年層や一部の「丁寧な暮らし」をする層には認知されていたが、コロナ禍以降の健康ブームと合わさり、若い世代にも急速に広まったのだ。
真空断熱ボトルなどで人気のサーモスが2023年12月に行った調査(※)によると、20代~30代男女の約4割が「白湯を飲む」と回答しているという。さらに男女別にみると、20代男性50%に対し女性は43%、30代男性38%に対し女性は33%と、男性は女性よりも日常的に白湯を飲む人が多いのだ。若年層の白湯のブームから、「白湯男子」などという言葉も生まれているとか。
白湯を飲む人の6~7割は習慣化しているため、朝の通勤時や外出先で手軽に飲めるペットボトル白湯のニーズも自然と高まったというわけだ。
アサヒ飲料の『白湯』が売れたのは、外的要因だけではない。2014年に発売して売れ行きを伸ばせなかった商品名やパッケージを、2022年11月の再販時に刷新したのだ。
商品名を『富士山のバナジウム天然水 ホット』からシンプルな『白湯』へ変えることで、白湯であることを全面に推しだした。これにより、天然水を50~60℃に温めたいわゆる普通の “お湯” を、健康と美容に良い『白湯』という飲み物にブランディングしたのだ。
当初は冬季限定販売の予定だったが、販売から1か月で販売計画の約3倍の売り上げを記録し、店舗の要望が多かったことから春から夏にかけても売り場に並び続けた。これが功を奏し、CMなど大々的な広告はほぼゼロにも関わらず、認知と売り上げの拡大につながったという。
その後、2023年9月にはより保温性が高い不織布素材のラベルへリニューアル。ビジネスパーソンを中心に日常的に飲まれるドリンクとしての地位を確立し、2023年12月には売上前年比173%を達成した。
今では、健康志向の高い令和世代の心を掴む売れ筋ドリンクとして通年販売されている。