YouTubeは昨夏に始動した「YouTube Music AIインキュベーター」を、日本でも開始したことを発表した。
このYouTube Music AIインキュベーターとは、アーティストや作詞・作曲家、プロデューサー等が、音楽における生成 AI へのYouTube の取り組みに対して、情報提供を行なうプログラムのこと。
そのコンセプトや参加者について説明した同社ブログが公開されたので、本稿にて概要をお伝えする。
写真左/YouTube音楽部門グローバル責任者 リオ・コーエン氏 右/クリプトン・フューチャー・メディア代表取締役 伊藤博之氏
AIは人間の置き換えではなく、創造性を増強すべきもの
YouTubeでは2023年8月に音楽業界と連携して、創造的な表現を強化しながら、一方で YouTube での芸術性を保護するかについてまとめた「音楽AIの基本的な考え方」を制定した。
これは「表現する場所をあらゆる人に提供して、その声を世界中に届けること」が使命と考える同社の考えに基づくもので、同社では「この使命を今後も実行していくためにも AI は重要な役割を担っており、YouTube では、AIは人間の置き換えではなく、創造性を増強すべきものと考えています」とコメント。
そして新しい技術を取り入れる際は、責任を持って進めるべきだと踏まえ、音楽業界とのパートナーシップと責任によって定義される、AI へのアプローチを作成したいと表明している。
このような考えから、アーティストや作詞・作曲家、プロデューサーから直接、生成AIの活用について意見を聞くプログラム「YouTube Music AI インキュベーター」を発足させた。
さらに、昨年の発足発表の際には、ユニバーサル ミュージック グループのルシアン グレンジ会長兼 CEO が、YouTubeとのパートナーシップについて語り、Anitta、Björn Ulvaeus、d4vd、Don Was、Juanes、Louis Bell、Max Richter、Rodney Jerkins、Rosanne Cash、Ryan Tedder、Yo Gotti、Estate of Frank Sinatra など、ユニバーサル ミュージック グループのアーティスト、作詞・作曲家、プロデューサーの参加が発表された。
■プログラムの参加者には音楽生成モデル「Lyria」の早期アクセスを提供
こうして2024年3月21日、YouTube Music AI インキュベーターが日本でもスタートすることが発表された。
日本では第一弾として、バーチャルシンガー・ソフトウエア「初音ミク」などの開発で知られる、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社が協力。
また、同プログラムの最初のグローバルパートナーであるユニバーサル ミュージック グループの日本法人とも緊密な連携によりパートナーシップが継続される。
同プログラムの参加者には、GoogleのAIの研究部門であるGoogle DeepMindが開発した音楽生成モデル「Lyria」の早期アクセスが提供される。
Lyriaの活用で、楽器とボーカルを備えた質の高い調和のとれた音楽の生成、アレンジ作業、そして出力される楽曲のスタイルや奏法に関する細かな設定を行なうことができるという。
例えば、プロンプトにアイデアを入力するだけで、ジャンルを融合させたり、ビートをメロディーに変えたり、ボーカルにサウンドトラックを添えることが実現する。
本件に関してYouTubeは次のようにコメントしている。
「YouTube は、AI が世界中の創造性を飛躍的に高める可能性に期待すると同時に、YouTube と AI の可能性は、音楽パートナーの成功があってこそ実現するものだと考えています。
アーティスト、作詞・作曲家、プロデューサー、そして業界全体をサポートしながら、ファンに価値をもたらし、クリエイティブな可能性を広げられるような形で、この新しい技術を活用していけるよう努めていきます」
関連情報
https://youtube-jp.googleblog.com/2024/03/japanmusicaiincubator.html
構成/清水眞希