多くの女性を悩ませる貧血。世界保健機関(WHO)では生殖年齢の女性の貧血を減らすことを目標に掲げており[1]、日本の生殖年齢の女性は貧血の割合が他の先進国より高いことが報告されている[2]。
そんな中、日本新薬はこのほど、貧血の実態を調査した論文「日本における貧血の割合、治療状況、また貧血患者における医療費、生活の質(QOL)、生産性損失」を発表した。
日本の女性の約5人に1人、男性では約10人に1人が“貧血”であり、貧血患者における全国の年間生産性損失は推定1兆1,300億円
貧血は、疲労感、頭痛、血の気が引く、運動時の息切れなど、さまざまな症状を引き起こすことが確認されている[1][3]。 女性の約20.8%、男性でも約9.1%は“貧血”であり、さらに年齢別に細かく見ていくと64歳までは女性のほうが男性より有病割合が高いことがわかった。また併存疾患等の影響を含むものの、貧血の人における生産性損失は推定1兆1,300億円という結果になった。
貧血患者1人当たりの1カ月の超過医療費は1万7,776円となり、貧血患者における全国の年間超過医療費は推定3兆3,200億円
経済的損失にもつながる恐れのある“貧血”だが、日本における貧血有病割合は15.1%(約1600万人)と推定され、そのうち55.3%が未診断となっていることが明らかになった。
さらに、貧血と診断されているにも関わらず85.3%の人は無治療であり、貧血の人では、貧血でない人と比較して1カ月の超過医療費は1万7,776円多く、全国の年間過剰医療費は推定3兆3,200億円となった。
■貧血とは
貧血は、赤血球の数やその中のヘモグロビン濃度が正常より低い状態であり、臓器や組織に酸素を運ぶヘモグロビンが不足することで起こる[4]。症状は多岐に渡り、疲れやすさ、めまいや立ちくみ、頭痛、動悸、
息切れ、顔面蒼白、作業量の減少などがあげられる[4][5]。最近の研究では、貧血と精神疾患(不安障害、うつ病、睡眠障害)との関連[6][7]、妊娠中および産後の貧血では早産、低出生体重児、産後うつとの関連などが示唆されている[8][9]。
<引用文献>
[1] Global nutrition targets 2025: anaemia policy brief. Policy brief. Geneva : World Health
Organization; 2014.
[2] The global prevalence of anaemia in 2011. Geneva: World Health Organization; 2015.
[3] Iron deficiency anaemia: assessment, prevention, and control. A guide for programme
managers. Geneva: World Health Organization; 2001.
[4] World Healh Organization (WHO). “Anaemia”. 2023-5-1. https://www.who.int/newsroom/fact-sheets/detail/anaemia, (参照日2023-02-15)
[5] 日本鉄バイオサイエンス学会治療指針作成委員会編.鉄剤の適正使用による貧血治療指針改訂[第3
版].響文社,2015.
[6] Vulser H, et al. Acta Psychiatr Scand. 2016 Aug;134(2):150-60.
[7] Lee HS et al. BMC Psychiatry. 2020 May ;20(1):216.
[8] Black RE, et al. Lancet. 2013 Aug 3;382(9890):427-451.
[9] Kang SY et al. J Psychiatr Res. 2020;122:88-96
出典元:日本新薬株式会社
構成/こじへい