ペット・ブームが定着し、ペットを同伴するペットツーリズムの需要が激増。全国の観光地に、ペットとの同伴可能な宿泊施設やアミューズメント施設が増えている。ペット同伴の旅行といえばマイカーが必須というイメージが強いが、最近、バスや列車、フェリーなど使ったツアーも増えてきているという。
そのひとつが、東京都葛飾区の観光バス会社「B.I.G株式会社」が運営している「わんわんトラベル」。同社はコロナ禍で一般の観光ツアーが激減した時に、ペットツーリズムに着目。2021年からペットと参加できるツアーの提供を始めた。月間で平均20~30本ほどのツアーを開催しており、これまでに累計2000頭以上のわんこが参加したという。
わんこ専用のバスで行くということなので、公共交通機関のようにあたりに気を遣う必要はなさそうだが、わんこが狭いバスに何時間も閉じ込められて、おとなしくしているものだろうか。逃げ場のない空間だけに、ずっと吠えられ続けるのはつらそう・・・。そこで実態を確かめるべく、同社の【わんちゃんといけるいちご狩り】を体験取材してみた。
▲【わんちゃんと行く山梨いちご狩りツアー】の募集告知。参加費は1名が25,000円、2名が32,000円(通常2名席を2組で利用する場合、32,000円)。小型犬は3頭まで、中型犬は2頭まで、大型犬は1頭)まで同行可能
新宿コクーンタワー前に集合し、9:00出発。にぎやかなわんこの鳴き声で、集合場所がすぐにわかる。この日は7組が参加。
“わんこフレンドリー”に全振りの、専用バスだった!
バスに乗り込んでみて、自分が大きな誤解をしていたことに気がついた。わんこと飼い主だけが乗れる普通の観光バスをイメージしていたが、わんこ同伴ツアー専用に設計された特別なバスだった。
シートの鮮やかなオレンジ色にしているのは、オレンジ色は犬にはグレーに見えるため、視覚的な刺激が少なく、犬にとって落ち着く色だといわれているから(※諸説あり)。
座席に備え付けのロールスクリーンを引くことで、わんこと飼い主だけの半個室空間になる。席からわんこが逃げてしまうのを防ぐだけでなく、隣の席のわんこと目が合わないようにする効果もある。人間にとっては隣の席の人とも話ができる高さなので、コミュニケーションもとれる。
席間が通常のバスの2倍のスペースがあるのでゆったり。さらにわんちゃん同士の目が合わないよう、シートをずらして配置しているという徹底ぶり。
汚しても洗える防水加工のビニールシートで、床はわんこが歩きやすいようにすべり止め加工を施している。匂いに敏感なワンちゃんのため、プラズマクラスターを搭載して、他のわんこの匂いやバス特有の匂いを感じにくくしている。カーテンにも抗菌加工を施している。
2年間のツアーで一度もワンちゃん同士のトラブル無し
これだけ配慮しているせいか、バスがスタートしても、わんこたちはいたって静か。いつもこうなのか、たまたまなのか、今回が同社のツアー2回目だという参加者に聞いてみると、「前回は初回なので、バスの中でおとなしくできるか不安だったのですが、ずっと落ち着いていて、ストレスを感じている様子もなかったので、今回も申し込んだんです」とのこと。
見ていると、飼い主がお出かけ好きのせいか旅慣れていて、マナーを心得たわんこが多いという印象。たまに吠えるわんこがいても、飼い主がたしなめるとすぐにおとなしくなる。同プラン開始時からドライバーを務めている、B.I.G株式会社取締役の中村広一営業本部長も「わんこ同士が興奮したり喧嘩したりといったトラブルは、この2年間一度もなかった」と語る。