オンラインゲーミングプラットフォームのRobloxは、日本時間2024年3月19日から3月23日までサンフランシスコで開催中のゲーム開発者会議(Game Developers Conference 2024、以下GDC)において、「アバター自動設定」と「テクスチャ生成」の2つの新技術を発表した。
これらの新しいツールは、時間のかかるアバターのセットアップとテクスチャ作成の工程を削減することで、クリエーターによる反復作業と高速な規模拡大を支援するものだ。
アバター自動設定について
アバター自動設定は、3Dボディ・メッシュを動くアバターに自動的かつ即時に変換することで、アバター作成プロセスを簡素化する。
たった1回のクリック操作で自動的に3Dモデルのリグ、ケージ、セグメント、スキンを作成。これまで多数の人日がかかっていたプロセスが、わずか数分で完了するという。
最初のアルファ版リリースは、クリエーターにRoblox Studio上でこのワークフローを提供することで、何時間もかかっていた手作業を削減することを目的としている。
テクスチャ生成について
テクスチャ生成では、テキストプロンプトを使って3Dオブジェクトの外観を素早く変更することができる。
この機能を使用することで、クリエーターは、開発中のバーチャル空間において、新しい外観のプロトタイプや、新しいテクスチャを素早く簡単に作成し、ワークフローを最適化することが可能だ。
例えば、クリエーターが木製の宝箱のテクスチャを作成するよう指示すると、テクスチャ生成は宝箱の角の鋭さを強調し、木の板や鍵のような特徴を考慮したテクスチャを作成する。
あるいは、クリエーターは、様々な色やテクスチャで複数のバージョンのアセットを簡単に生成することができる(例:金、銀、銅のトロフィーを作成)。
今回の発表に際してロブロックスのクリエーター・エンジニアリング担当VPニック・トルノー氏は、次のように述べている。
「GDCでは、当社のビジョンである『どこでも、誰でも、何でも制作できるようにする』の実現に向けて、ロブロックス・プラットフォーム上で、制作、事業規模拡大、収益化するための新しい技術や事業機会を紹介しています。
当社の新しいAI技術は、インディーゲーム開発者から大規模ゲームスタジオまで、誰もがロブロックス・プラットフォーム上で魅力的なコンテンツを素早く制作できるようサポートします。アイデアの段階から、実装後の共有に至るまでをこれまでなかったほどに素早く行うことができるのです。
これらのツールを使うことで、クリエーターはクリエイティブなアイデアの発案に集中し、実装の手間を省力化できます。これにより、開発したバーチャル空間のエンゲージメントを上げて、最終的には、事業を成長させることができます」
さらに受賞歴のあるロブロックス空間開発スタジオ「Toya Play」の最高執行責任者(COO)であるガイ・デ・ビア氏も、こう話す。
「生成AIは前例のない方法で開発をすでに効率化しており、当社が考えるAIの最大の適用機会は当社で行っているアートワーク関連の業務です。
当社は毎月多数のカスタマイズ可能なキャラクターを作成していますが、アバター自動設定は当社が制作可能なキャラクター数の生産性を劇的に向上させる可能性を秘めています。
当社が構築しているような、無数の特注アバターが登場するバーチャル空間において、AIは制作による経済活動に変革をもたらし、クリエーターに創造的なビジョンを実現する無限の機会を提供します。
ロブロックスや業界全体で起こっているイノベーションにより、今後10年間で制作のプロセスは完全に変化するでしょう」
アバター自動設定はアルファ版、テクスチャ生成はパブリックベータ版として提供されており、ロブロックスの高度な開発環境であるRoblox Studio(https://create.roblox.com/)からアクセスできる。
ロブロックスのAIイノベーションへの継続的な取り組み
今回の新しいAI技術は、2024年2月にリリースされたコードアシストとチャット自動翻訳を含む、ロブロックスによる一連のAIイノベーションの一環として発表された。
コードアシストは、クリエーターがコードを入力する際に行や関数を提案するツールで、11か月間のベータ版の利用を通じて、クリエーターはコードアシストが提案した約3億文字のコードを採用した。
Toya Playによると、同社のソフトウェア開発チームは、コードアシストを使用することで、すでに効率が5%向上し、全社的に数カ月分の業務が効率化されている。
ユーザーが話す言語に関わらず、世界中のユーザーと簡単にコミュニケーションを取ることを可能にする、チャット自動翻訳の提供開始から30日間で、クリエーターが提供するバーチャル空間においてロブロックス独自サービス、TextChatService(プロパティの設定でチャットウィンドウの位置やサイズ、外観を変更するサービス)の使用量は2倍以上に拡大した。
ユーザーのエンゲージメントが増加したことでこれまでにロブロックス上で197億通のメッセージがチャット自動翻訳で翻訳されており、これはロブロックスで送信されるメッセージの約3分の1に相当し、翻訳されたメッセージには世界の市場のユーザーからのクリエーターへの貴重なフィードバックが含まれる。
構成/清水眞希