農林水産省が2023年に発表した最新の食品ロス量は523万トン、そのうち事業系では279万トン(2021年度推計値)。523万トンの食品ロスを国民1人当たりに換算すると、1日茶碗約1杯のご飯を捨てていることとなる。
ただし、過去と比べると食品ロス量は減少傾向となっており、中でもレストランや宴会などで食品ロスを招きやすい「ホテル」は各社さまざまな取り組みを進めている。今回は東京のラグジュアリーホテルの、独自性のある食品ロス対策事例を3つ紹介したい。
1.午前中で売り切れる注目商品に。パレスホテル東京「端っこロール」
パレスホテル東京 ペストリーショップ スイーツ&デリ「端っこロール(900円)」。
パレスホテル東京で今注目を集めているのが、食品ロス対策の結果生まれた「端っこロール」。これは1カット1,150円の「プレミアム ショートケーキ」製造時にどうしても生まれてしまう「切れ端」を薄いスポンジで巻き、クリームといちごでデコレーションしたロールケーキだ。
ボリュームとしてはプレミアム ショートケーキの倍以上の大きさで、プレミアム ショートケーキと同じいちご・スポンジ・生クリームを使用。それにも関わらず買いやすい価格ということもあり、現在は午前中でほぼ売り切れる人気商品となっている。消費者は食品ロス削減に協力しながら、お得感を得ることができる。
端っこロールの元となる、「プレミアム ショートケーキ(1,150円)」。
ただ、「端っこロール」は最初から人気商品となったわけではない。2021年6月の販売当初は、売れ行きが芳しくなかったため、“ある工夫”を施したと、パレスホテル東京 ベーカリー&ペストリー課 統括シェフの窪田 修己さんは話す。
窪田さん「食品ロスを減らすため生まれたという成り立ちと、商品の紹介をPOPにして店頭に置いたところ、午前中で売り切れる人気商品になりました。購入されるお客様は商品の裏に隠されたコンセプトや、環境配慮の想いに賛同くださっているのだと感じております」
リピーターの中には複数点購入する人もいるのが特徴で、ペストリーショップ スイーツ&デリ マネジャーの井上 大輔さんによると「2週間に一度、6~8点購入し、ご自身のお客様にお配りする方もいらっしゃいます」とのこと。ビジネスパーソンにとっても、今の時代に即したストーリー性のある商品は顧客に話しやすく、手土産として最適だろう。