過酷な環境に晒されているビジネスパーソンの悩みは深い。だが、日々の課題の中にこそ人生を豊かにするヒントが詰まっている。今回はかなえ先生の新刊『世の中の8割はどうでもいい。』の発売を記念して、担当編集が同書に記された「現代人の心をラクにするテキトー人生術」のエッセンスを深掘りします!
SNSやスマホの便利さの代償で疲れてしまったりしていませんか? 人と人との距離が近くなりすぎてしまった世の中を上手に渡っていくには、「テキトー」がちょうどいい……人生をバランスよく生きるための「テキトー人生術」を自称・世界一テキトーなVTuberが説きます!
【特別講演】頑張ってもうまくいかない世の中への処方箋
犯罪学教室のかなえ先生
元少年院の先生で、犯罪心理学や教育犯罪学の知見からニュースなどを解説するVTuber。近著に『もしキミが、人を傷つけたなら、傷つけられたなら』。
思考に力みが入る時代に必要な〝テキトー力〟
担当編集・千葉(以下、千葉) 原稿お疲れさまでした! 今回の原稿めちゃくちゃ良かったと思います。正直、僕には前作よりもブッ刺さりました。首がもげるほど頷きました(笑)。
かなえ先生(以下、先生) おー、それはめちゃくちゃうれしいですね。今回はかなり手ごたえ感じています。
千葉 今回は『世の中の8割はどうでもいい。』という結構尖ったタイトルですけど、原稿を読んでみると、事件や事故、炎上や不祥事などの心や脳が疲れる情報を目にする機会が多くなった時代への皮肉のようにも感じました。
先生 そうですね。もっと言うと、情報に心が惑わされがちな世の中と、多様性が重んじられるようになった社会で急速に高まってきた息苦しさや不寛容に対する私個人が抱く嫌悪が根底にあるかもしれません。読者には「アナタが目にする情報のほとんどはアナタに直接関係ないし、アナタだけが何か背負って真面目に生きる必要はない。世界は思っているよりも広くてギリギリなバランスを保った抽象的な存在だから」と伝えたかった。
千葉 本文に何回も出てくる「テキトー」もその辺りの考えを反映しているのですね。
先生 そうですね。力むと身体が硬直するのと同じく、思考の幅も狭く、硬直してしまいます。もうちょっと肩の力を抜いて、まずは本当に自分に関係のあることから向き合ってみない? というメッセージが込められています。
テーマ【1】「テキトー」って悪いことなの?
「この仕事、テキトーにやりました」と上司に報告したら、きっと怒られるだろう。どうして「テキトー=悪」なのか? そこには大きな誤解がありそうだ。
千葉 一般的に「テキトー」という言葉はあまりポジティブな印象を受けないですが、かなえ先生は本文で「今の時代だからこそ必要」と記しています。実際読んでみて「テキトー」という言葉をかなりポジティブな意味で使用されていますが、その辺りの意図は何だったのでしょう?
先生 確かに「テキトー」という言葉が、あまり社会では良い意味で使われていないことは事実ですが、逆に何でも真面目に取り組むことも良いことなのかと言えば違う気もしませんか?
それこそ千葉さんもたまに「テキトーでいいや」って思うことありません?
千葉 まぁ確かに……。
先生 でしょ? だから、私はいろんな情報が嫌でも目に飛び込んでくるようになった社会において、すべてを真正面から受け止めてしまって心や脳が疲れてしまう真面目な人に、力の配分を考えるだけで人生は何となくうまくいくようになるよという意味で「テキトーに生きること」の大切さを説いています。周りの目や状況をうかがってばかりだと、いつしか自分らしさが死んでしまって息が詰まってしまいます。
千葉 前書きの〈気にしないこと。みんな君に興味ない〉とかまさにそんな感じですね。
先生 「みんな君に興味ない」という言葉は冷たく聞こえるかもしれません。でも、人生は失敗の積み重ねで出来上がるもの。みんな大なり小なり失敗していますし、自分に関係のない他人の失敗なんかすぐに忘れてしまうものですよ。そんな他人の失敗なんか自分のリソースを使っても意味ないですよ。
千葉 それでも結構失敗を気にしてしまう人は多いような……私もですけど。
先生 これも本に記しましたが、「問題を抱えている状態の自分は、周囲に迷惑をかけている」と思い込んでいる人には、改めて「周りはアナタに対して、そこまで興味を持っていない」という言葉を贈りたいですね。失敗してもいいし、恥をかいてもいい。みんな悪いし、自分も悪い。だるかったら一時的に他人のせいにしてもいい。変に失敗を恐れすぎてまわりくどく立ち回る必要はないのです。
人間は皆、失敗作みたいなものですよ。失敗はいいけど、無駄なことはしない。本当にテキトーでいいと思っています。肩の力を抜いていきましょう。
テーマ【2】かなえ先生はどんな〝テキトー人生〟だった?
「日本一テキトーなVTuber」を自称するかなえ先生。でも、テキトーだったら成功しないんじゃないの? という疑問に答えます。
千葉 今回の作品は「世の中の8割はどうでもいい」「テキトーに生きる」などの言葉が大きい柱になっています。これは先生のこれまでの経験に基づくのでしょうか?
先生 そうですね。「生きることのハードルが上がってしまった社会」において、私がこれまでの経験から導き出した最適解だと思っていただければ。読み返してみると本当に恥ずかしいですけどね(笑)。
千葉 いやいやいやいや! 今回、先生の生い立ちを知って、「なるほど、こんな人生を送っていればこんな考えになるわな」と納得でした。
先生 いじめ、不登校、自分を肯定するための学歴厨時代や劣等生だった高校時代と国家公務員から一転ニートになって、気づいたらVTuberになって……客観的に見るとめちゃくちゃなんですけど、私は幸せなので問題ない、そんな感じでしょうか。
千葉 なるほど。
先生 読んでいただいたらわかると思うのですが、物事を正しく「自分事」「他人事」に振り分けて「自分事」に適切なリソースを割くことが人生を好転させるひとつの方法だと私は考えます。そして振り分けの作業の時に「テキトーさ」が大事になるのです。