先日、ふらりと河口湖へ遊びに行った。
渋滞していなければ、クルマで1時間半。
ドライブにもちょうど良くて、学生時代からよく訪れている。
朝から雲ひとつない、真っ青な空が広がっていた。
湖沿いを散策したり、写真を撮ったり、
予定のない休日をのんびり堪能して、暗くなってきた頃に温泉に入った。
日本中どこに行っても、温泉があるのはありがたい。
その土地のお湯に浸かって、その土地の食べ物をいただくのが好きだ。
すっかり温まった身体でクルマに乗り込み、
東京に戻る前に、何を食べようかなと考えていたら、
急に現われた景色に、驚いてしまった。
暗闇の中に、富士山が浮かんでいたのだ。
地元の人たちに笑われてしまうだろうか。
夜になってもこんなにはっきり見えるなんて、知らなかった。
慌ててクルマを停めて、外に出た。
雪を被った部分が、青白く光っている。
最初は街の灯りかと思ってしまったけれど、
月明かりを反射しているのだった。
東京で暮らしていると、月明かりを意識することは少ない。
見上げてみると、その日はちょうど満月。
雲もなく、夜の富士山を眺めるには最高の条件が揃っていた。
ぼんやりと浮かぶ富士山は、怖いくらいの美しさだった。
昼の富士山の残像のようで、
本当にそこに在るのかわからなくなってしまう。
気がつくと、さっきまですぐそこにあったオリオン座が、
ずいぶん高いところまで上っていた。
身体もすっかり冷えてしまったので、もう一度温泉に入ることにした。
写真は、夜の富士山。
撮影するとどうしても明るくなってしまうけれど、
本当はもっと暗くて、神秘的だった。
テレビ朝日アナウンサーを経て、2019年よりフリーとして活動。現在、『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日)、自身初のラジオ番組『日本郵便 SUNDAY’S POST』(TOKYO FM/JFN)、MCを務める『土曜はナニする!?』(関西テレビ・フジテレビ系)などに出演中。
文/宇賀なつみ