牛乳は、タンパク質、脂質、炭水化物に加え、カルシウムやミネラル、ビタミンなどがバランスよく含まれた栄養食。一方で、「飲むとおなかがゴロゴロする」という体質から、敬遠してしまう人が一定数いるのも事実だ。これは乳糖不耐症といわれ、牛乳に含まれる乳糖をうまく分解・吸収できないことから引き起こされる症状だが、そんな悩みを抱える人にとって救いの手になり得ると、昨今話題なのが、「A2ミルク」。
「牛乳に含まれるタンパク質・ベータカゼインがA2型のものが『A2ミルク』。日本に流通する一般的な牛乳はA1型とA1・A2の混合型で、アミノ酸の連鎖の過程で起こる遺伝子の違いが、消化不良を起こすか否かの分かれ道。A1型の牛乳が腹痛症状に何らかの影響を与えるということが、近年の研究でわかっています」(日本A2ミルク協会代表理事・藤井雄一郎さん)
A2型の牛乳は〝おなかにやさしい〟とにわかに注目され、中国やアメリカではすでに一大市場に。日本でも、2023年4月、首都圏の量販店で発売が開始されてから販売店を増やし、ヨーグルトなどの加工品も登場している。
また、A2ミルクが日本酪農界にとって光明となるとの見方も。
「近年、輸入飼料やエネルギー価格の高騰により、経営困難な状況に陥る酪農家が少なくありません。A2ミルクによってこれまで乳糖不耐症を理由に牛乳を飲まなかった人たちが日常的に取り入れるようになれば、酪農業界にとっても救世主となります」(藤井さん)
日本人の健康と酪農の未来を支える存在へと発展できるか。A2ミルクに大きな期待がかかる。
A2ミルクは、乳中のベータカゼインがA2型のみ。A1型に比べて、大腸を通過する際に乳糖の発酵を抑えられることから、「おなかにやさしい」とされる。
牛乳
認証農場で飼育された牛から搾取
(左)JA中標津『なかしべつ牛乳プレミアムNA2 MILK』415円(1000ml)
北海道中標津において、食品安全、家畜衛生、環境保全を満たすJGAP認証の農場で搾取。発売時、道外は東京1店舗の扱いだったが、現在では東北から関西まで販売店を広げる。
〈人気のワケ〉地元関係者が行なったアンケートでは、牛乳が苦手だという人の約9割が「これなら飲めた!」と答える結果に。
牧場・乳牛限定のプレミアム
(右)近藤乳業『北海道 A2別海牛乳』オープン価格(実勢価格約233円/1000ml)
2023年4月に初めて一般量産販売されたA2ミルク。当初は「オーケー」一部店舗のみでの販売だったが、1年たたずして、全店舗での取り扱いに。ほかにも取扱店を拡大する。
〈人気のワケ〉「大人になってから牛乳を避けていたが、久しぶりにおなかを心配せず飲めた」と、ユーザーから喜びの声が。
ヨーグルト
「人・牛・環境にやさしい」を目指す
カネカ『ピュアナチュール オーガニックヨーグルト プレーン/ブルーベリー』各267円
グループ運営牧場「別海ウェルネスファーム」のA2ミルク有機生乳を使用したオーガニックヨーグルト。発売から半年で取扱店舗数が約10倍に拡大。
〈人気のワケ〉おなかがゴロゴロしにくいA2ミルクに加えて、オーガニックという点からも、健康意識が高いユーザーからの評価が高い。
プリン&ババロワ
乳製品デザートもゴロゴロしない!
オオヤブデイリーファーム『MARBLE PUDDING エスプレッソ(マーブルプリン)』648円
『苺クリームババロワ』864円
熊本県で約50年にわたり循環型酪農を続ける自社牧場のA2ミルクだけを使用した、おなかにやさしいデザート。牧場搾りたての濃厚な味わいが自慢。
〈人気のワケ〉「罪悪感なく、おなかの中から元気になるようなものを届けたい」という酪農家の思いが詰まった絶品スイーツ。
協会オリジナルも登場
日本A2ミルク協会『A2ミルク』価格未定
より安心・安全なA2ミルクの普及を目指し、認証制度の構築にも注力する協会から、3月にはオリジナル商品が発売予定。
取材・文/坂本祥子
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2024年1月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。