指定価格制度
家電量販店で値引き交渉をしたり、より安く買うために複数店舗を回った経験は、誰しもあるはず。そんな家電販売市場に変化が起こっている。きっかけは、パナソニックが2020年に導入した新販売スキーム。この制度では適用商品の販売価格をメーカー側が指定し、在庫リスクを負う代わりに、販売店は自由に値下げができない。一方で消費者は導入店舗ならどこでも同じ価格のため、安いお店を探す手間も省ける。
「『お客様に価値ある商品をお届けしたい』というのが私たちの総意。同制度により、毎年マイナーチェンジを繰り返すのではなく、ユーザーに高価値をもたらす商品を開発していきたいという思いで取り組んでいます」(パナソニック ・広報)。販売店による値崩れを防ぐことで、より商品開発に注力できるという。一般的に「指定価格制度」と呼ばれるこの制度、昨年10月には、日立も導入した。
「家電の販売形態が多様化する中で、消費者にとって安心できる環境づくりを目指すのが大きな目的です」(日立GLS・青山拓未さん)。取扱対象店で購入することで、設置工事やアフターサービスといった、ユーザーが安心できるサポートの向上を目指す。
量販店側が「制度の説明をしてから接客に入るケースが多い」と話すとおり、消費者への浸透率はまだ低い。周知したうえで、価格の信頼度を高めていくことが今後の課題だ。
指定価格制度の仕組み
在庫をさばくために値下げを繰り返していた販売店。「在庫の回転率を気にせずに済むのもメリットです」(ヤマダホールディングス 広報課・瀧澤隼人さん)
ヤマダデンキの店頭には、「指定価格」の表示が。店ごとに掲示方法やポイント対応に差があるので確認が必要だ。
取材・文/坂本祥子