2011年、ホンダ初のスーパーハイト軽が発売された。ホンダの軽ラインアップに欠けているカテゴリーの開発には元F1のエンジニアを揃え、ホンダの最新技術を集結させた。その効果もあってか「N-BOX」は2014年を除いて軽自動車販売台数のトップを獲得。2017年に登場した2代目もこの流れを受け継ぎ、2022年の時点で8年連続、販売台数はトップ。登録車も含めた新型販売台数も2年ぶりで取り戻す大ヒット作となっている。
その魅力はプラットフォームに、ホンダ独自のセンタープラットフォームを初めて軽に採用。低床化を実現。さらに「マンマキシム メカミニマム」の思想も採り入れたことで前席足元のスペースに余裕ができ、室内が広くなったことが挙げられる。ホンダというブランド力が軽自動車にも通用したのも要因だ。
駆動方式はFFと4WD、自然給気が5タイプ、ターボが3タイプ
2023年10月、3代目の「N-BOX」が発表になった。試乗したのは「N-BOXカスタムターボ」。売れ筋商品なだけにバリエーションも豊富に用意されている。パワーユニットは、ターボ、自然給気。変速機はCVT。駆動方式はFFと4WDで、自然給気が5タイプ、ターボ3タイプでそれぞれの組み合わせができる。カスタムターボのFF車は、ターボモデルの中ではエントリーグレードで、車両本体価格も204万9300円(10%消費税込み)だ。
「カスタム」の外観は、フロント全幅いっぱいが広がる横一文字のライトデザインが特徴。ライトはホンダ初のダイレクトプロジェクション式フルLEDヘッドライトを採用している。リアもクリアレンズのフルLEDコンビネーションランプやロー&ワイドな見え方と空力特性を考慮した専用のエアロデザインだ。
フロントピラーがすっきりして左前方の視界が向上
内装で大きく変わったのはメーターパネルだ。先代はハンドルの上からメーターを見るデザインだったが、新型はハンドルの内側でメーターを確認するタイプに戻った。ダッシュボードはフラット化され、運転者が車幅や車両の動きを把握しやすくしている。さらに左フロントピラーの内側に設置していたサイドアンダーミラーをドアミラーに移設。フロントピラーをすっきりさせ、左前方の視界が向上した。
パワーユニットは基本的には先代からのキャリーオーバーだが、制御は見直されているという。CVTも変速制御やアイドリングストップ領域を見直したいというが、これは試乗に出かけて、すぐに体感することができた。ホンダの青山本社から出発し、最初の信号待ちで、アイドリングストップしている「N-BOX」をスタートさせた時だ。アクセルを踏むと同時に、即座にエンジン始動、同時に走り出した。
エンジンの始動と同時にクルマが動き出す感覚
これまでならアクセルを踏み、ワンテンポあって、ブルッとエンジンがかかり、クルマが動き出していたが、アクセルオンでのスタートのタイミングが早くなり、エンジンがかかってから動き出すのではなく、エンジン始動と同時にクルマが動き出す感じだった。隣のクルマがアイドリングストップからエンジンがかかるときに、こちらは動き出している感じだ。さらにエンジン再始動時の音も振動も抑えられている。
Dレンジでの走りも軽快だが、気になったのは40km/hあたりでアクセルオフにしても、エンジンブレーキはかからず、コースティングのような状態で走ること。街中の燃費向上には重要なのかもしれないが、個人的にはSモードでエンジンブレーキがかかるほうが街中では使いやすかった。Sモードといえば、「N-BOX」のパドルシフトは、Sモードでのみ使える。パドルは7速までシフトできる。
ホンダのクルマは、たとえトール系ワゴンであっても、走りの性能に手抜きはない。やや重めの操舵でのコーナリングや高速コーナリング時の安定感は、軽ワゴンのレベルを超えている。乗り心地はやや路面のザラつきが伝わる。タイヤはブリヂストンの「エコピアEP150」で165/55/R15サイズを装着していた。
後席の実用性もチェックしてみると、着座位置は高めで、室内は広い。前席背もたれにはテーブルが左右に装備されている。テーブルには左右にカップホルダーの穴も開いている。ただし、テーブルの幅は150mm程度なので、仕事用のパソコンなどを載せるには、狭すぎる。