パナソニックグループの中で、くらしの基盤となる電気設備の分野を担う、エレクトリックワークス社が、「マイクロLEDを活用した次世代照明器具」技術開発に関する発表会を行なった。
マイクロLEDを使い1台の器具で複数の対象物を照らすことができる
照明器具のLED化により、商業施設をはじめとしたさまざまなシーンで、ライトアップなど、光を活用した多彩な演出が行なわれている。しかし、これまで1台の照明器具で照らすことのできる場所は1か所に限られ、照らす場所の数に応じた多数の照明器具を準備する必要があった。
現在開発中の「次世代照明器具」(ダクトタイプ)。販売価格は20万~50万円を想定している。
この課題を解決するのが、LED照明の可能性を模索し、くらしのインフラを支える事業を展開してきたエレクトリックワークス社だ。
同社が開発した次世代照明器具は、1台の器具で複数の対象物を照らすことができ、照らす場所の形、明るさも個別に変えられる画期的なもの。文字やサインなどを光として照射することも可能にしている。照明器具の台数を減らせることで、施工や設定の手間を減らし、資源の節約にもつなげていける可能性があるという。
光源に活用しているのは、日亜化学工業が開発したμPLS(マイクロPLS)だ。髪の毛よりも径の小さいマイクロLEDを、1平方ミリメートルあたりの面積に400個の間隔で基板に埋め込み、全部で1万6384個を配置。駆動させるための半導体素子として、ドイツのインフィニオンテクノロジーズ社と共同開発した内蔵LEDドライバICを実装している。
μPLSは、クルマのヘッドランプなど車載を前提に開発されたため、高負荷環境でも安定した明るさを維持し、ピンポイントで、対向車や周囲の状況に併せたまぶしさの制御、スポット照射など様々な特徴をもっている。エレクトリックワークス社は、μPLSと同社の照明制御技術や高速信号処理技術などを組み合わせ、新しい器具を開発した。
この自生台照明器具は、μPLSのLED1粒単位での点灯制御に対応。光の個数や形状、エッジの立ち具合を自由にコントロールできる。光を動かせるため、例えば、照らしているものの場所が動くとそれに合わせて光る場所も移動。陰影のパターンやサイン表現にも対応する。
動的な光を使うことで、 ショップでは1台の照明器具で動的な光を生かした商品演出や、照射の変更が実現し、加えて、道案内や避難誘導、さらに自然を感じるような揺らぎの光をつくり、心地良さや癒しを感じられる空間を演出することも可能。ホテルなどでは、あかりとサインを兼ね備えた照明で宿泊客を客室に案内するなど、さまざまな用途での活用が期待できる。
ショップでは商品ごとに、細かい照らし分けを実現、スポット照射によってユーザーの注目度を高められる。手書きによるポップ文字も照射ができる。
ホテルではエレベーターから降りてから部屋までの案内を光で行なうことも。部屋のキーと連動させて、泊まる部屋の前に来たら光でサインを出す。
複雑な光をタブレットによって直感的に楽しくコントロール
もう一つの大きな特徴が、複雑な光の演出も操作端末の画面で簡単に楽しく扱えるということだ。インターフェースは、キャンバスのようなスペースと、光の形状や動かし方を選ぶボタン類で構成。ユーザーは「空間に光を描く」感覚で、直感的に思いのままの光を創り出すことができる。
発表会でのデモンストレーション。直感的な操作でさまざまな光の表現をつくることができる。
操作画面を用いることによって、ユーザーが器具の存在を気にすることなく、空間と光に意識を集中させ、 直感的に思い通りの光を作り出すことができる。また、操作に光が即座に反応するよう、通信データの圧縮と器具内部の信号処理高速化技術を用いることで、操作のストレスを低減させ、簡単に器具の操作を楽しめる体験を提供する。
プロトタイプのスポットライト型器具を手にするパナソニック エレクトリックワークス社 ソリューション開発本部 山内健太郎氏(左)と、光源を持つ日亜化学工業 先進商品開発本部 黒田浩章氏。
パナソニック エレクトリックワークス社では、どういった使い道がユーザーの役に立つかを検証しながら、次世代照明器具の2025年以降の製品化を想定。将来的な発展形として、センサーやAIを組み合わせた光のパターンの自動最適化やサービス提供も検討していくとしている。
取材・文/安藤政弘