世界の肥満者数、10億人を超える
世界の肥満者の数は、大人と子どもを合わせると10億人を超えるとの分析結果を、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)地球環境衛生学部長のMajid Ezzati氏らが、「The Lancet」に2月29日発表した。
この研究によると、現在、世界には肥満の成人が約8億8000万人、肥満の小児が約1億5900万人いると推定されたという。論文の上席著者であるEzzati氏は、「1990年に世界の多くの地域の成人で顕著に認められた肥満の蔓延が、現在は学齢期の子どもや青少年にも認められるようになった。これは極めて憂慮すべき問題だ」と危機感を示す。
1,500人以上の研究者が参画したこの研究では、3,663件の研究の対象者である、197カ国、2億2200万人(うち、5~19歳が6300万人)の体格指数(BMI)の分析が行なわれた。
その結果、1990年から2022年までの間に、子どもやティーンエイジャーの肥満率は、女児で1.7%から6.9%、男児で2.1%から9.3%へと約4倍上昇していたことが示された。同期間に成人の肥満率も上昇し、女性では8.8%から18.5%へと2倍以上に、男性では4.8%から14%へとほぼ3倍に達していたとの分析結果も明らかにされた。世界で最も肥満率が高いのは、女性がトンガと米領サモア、男性が米領サモアとナウルだった。また、ポリネシアとミクロネシアでは成人の60%以上が肥満であった。
これらの数値は世界肥満連合(WOF)が『世界肥満アトラス2022』で示した、2030年までに世界の肥満者数が10億人に達するとの予測値を上回るものだ。今回のEzzati氏らの研究によると、この『世界肥満アトラス2022』が発行された時点で、すでに世界の肥満者数はこの数値を超えていたことになる。
WOFは、遺伝的要因や生物学的要因、ヘルスケアへのアクセス、必須栄養素が不足した高カロリー食品の普及など、世界には肥満を引き起こすさまざまな要因が存在すると説明している。さらに研究者らは、地球規模の問題が肥満と低体重の両方の状況を悪化させる可能性に懸念を示している。
マドラス糖尿病研究財団(インド)のGuha Pradeepa氏は、「気候変動や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる混乱、ウクライナ戦争などの問題が貧困を拡大し、栄養価の高い食品のコスト上昇を招くことで、肥満と低体重の割合の上昇をもたらす危険がある」とICLのニュースリリースの中で指摘している。
同氏は、これらの出来事が「一部の国々で家庭での食料不足を招き、また他の国々では非健康的な食品へのシフトをもたらす一因となっている」と説明。その上で、「より健康的な世界を実現するためには、これらの問題に対処するための包括的な政策が必要だ」と述べている。
一方、世界保健機関(WHO)事務局長のTedros Adhanom Ghebreyesus氏は、「今回の新たな研究によって、食事、身体活動、必要に応じた適切なケアを通じて、幼少期から成人期にかけての肥満を予防し管理することがいかに大切であるかが浮き彫りになった」と話す。
また、「肥満削減という世界的な目標の達成に向けて正しい道を進むためには、WHOと各国の公衆衛生機関によるエビデンスに基づいた政策で支えられた、政府と地域社会の取り組みが必要」と指摘し、「重要なことは、民間セクターの協力が必要だということだ。民間セクターは、自社製品が健康に与える影響について説明責任を果たさなければならない」とする見解を示している。(HealthDay News 2024年3月1日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(23)02750-2/fulltext
Press Release
https://www.imperial.ac.uk/news/251798/more-than-billion-people-living-with/
構成/DIME編集部